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大学の将来像に信用力を ~私立大学の格付取得~
「AAA(トリプルエー)」「BB+(ダブルビープラス)」……。
金融、証券業界の言葉が、大学改革の現場でも聞こえるようになってきた。
大学にとって格付取得は何を意味するのか
――格付投資情報センターに聞いた。
格付けとは何か?
私立大学が格付取得を急いでいる。今年二月に法政大学が「ダブルAマイナス」、四月に日本大学が「ダブルAフラット」、以降、七月に早稲田大学、さらに九月には成蹊大学、大阪経済大学と、有名私立大学が相次いで格付けを公表した。
格付けとは、償還確実性、つまり借りた金に、さらに利子を付けて返せるかどうか、その能力を投資家に対し示す記号である。格付けは資金調達のために起債する際、取得が必須条件となる。なぜなら投資家は格付けを目安に投資を決めるからだ。
格付けは専門の格付会社が行い、有名なところではムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がある。今回、格付けを行ったのは、金融庁の指定格付機関でもある株式会社格付投資情報センター(R&I)で、同社は国内企業の格付けで最大のシェアを誇っている。
格付取得の意味
格付取得ブームは何を意味するのだろうか。私立大学は、それほどまでに資金調達を急がねばならないのだろうか
――R&Iシニアコンサルタント・鈴木淳史氏は、次のように分析する。
「制度は違うのですが、アメリカではすでに、多くの大学がムーディーズやS&Pから格付けを取得しています。わが国の学校法人も、そうした動向はすでに研究済みで、もともと関心はあったはず。
そこに、少子化からの危機感、ディスクロージャー(内容開示)、財務の健全化など時代の要請が後押しし、格付けが具体的なものになってきたのだと思います。まずは、ステークホルダー(学生や教職員など)への情報開示、経営力のアピールから、といったところでしょうか」
実際のところ、わが国における学校法人が格付けを取得し、起債したとしても、それは有価証券にはならず、資金調達のためには特定目的会社(SPC)の設立や信託の利用など、コストと時間がかかる。
法政大学も「格付取得の趣旨」を、学校法人として「開かれた大学」のイメージアップ、第三者による本学の財務・経営分析的な側面の評価、資金調達手段の多様化とし、PRの要素を否定していない。
大学格付け四つのポイント
大学格付けにおけるポイントとして、R&Iシニアアナリスト・下山直人氏は、「納付金収入の動向」「納付金以外の収支の動向」「ストック」「ガバナンス(統治)・マネジメント」の四つを挙げている。
「納付金収入の動向とは、要するにお金が安定して入ってくるかどうか。最も重視するのは、学生を集める力です。そして、納付金以外のフローとコスト構造を見ます。
ここでは、帰属収支差額を重視しますが、要するに、企業でいうところの赤字・黒字です。ストックは、将来に備えてどれくらい着実にお金を貯めているか。
ガバナンスの部分では、それぞれの大学でターニングポイントとなる局面で、何をどう判断し、実行したか。また、将来何をしようとし、それは実行可能かどうかなど、実行力とバランスを考慮します」
さらに、格付けのための調査では、財務諸表などの会計資料をはじめとする膨大な資料の分析とともに、大学幹部および法人との面談が欠かせないという。
「学校法人の場合、帰属収支差額の水準だけで評価はできないし、聞かなければならないことも多い。実際にディスカッションすることによって初めて見えてくるものがたくさんあります」(下山氏)
安定性というメリット
現在公表されている五大学の格付けは、世界に名だたるグローバル企業と肩を並べている。こうした高い評価は「教育事業体の安定性に裏付けられている」と下山氏は説明する。
「学生の入学後、少なくとも四年間は一定の納付金収入が見込める。また大学設置基準に一定の財務条件があり、財務規律も守られている。さらに、教育という事業自体に起因するリスクも、一般事業会社のそれに比べれば少ない。学校法人という業態の安定性とリスクは、格付けに少なからず影響を持ちます」
IT関連事業は一年後にどうなっているかわからないが、教育はおそらく百年後も教育としてあり続けるであろうというわけだ。鈴木氏が続ける。
「そもそも我々の仕事は、主としてプロの投資家に向けて、投資対象の将来像、我々の言葉でいえばクレジットストーリーを描き、信用力を提示することです。
大学格付けも同じで、経営幹部へのインタビューや資料の分析を通し、大学の将来像を厳正な視点で査定しているのです。その意味では、日産より大学に貸したほうが償還確実性は高いが、さらにいえば、大学よりトヨタやデンソーに貸したほうが、もっと高くなるのではないですか、と我々は見ているわけです。つまり、格付けは格付けであって、それ以上でもそれ以下でもないのです」
効率性と透明性の追求
R&Iでは「格付取得の相談・訪問件数はすでに六十~七十程度。
年度内にあと五、六校ほど公表できるだろう」としている。
誤解してはならないのは、鈴木氏の言葉の通り、格付けはあくまでも投資上の指標の一つであって、大学そのものの優劣を表すものではないということである。
しかし、1999年度から大学の自己評価が義務化され、来年度には、第三者評価が義務づけられる見通しである。評価の受け入れは、大学にとってもはや必須の要件であり、格付けも、いわば「もっとも厳しい」第三者評価として、大学サバイバルに大きな効果を上げることだろう。
効率性、透明性の追求は、民間企業だけでなく、大学にも求められているのである。
記事の内容は第9号(2003年11月30日発行)を抜粋したものです。
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