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「戦略的大学連携支援事業」で特色ある大学づくりをさらに加速
文部科学省 高等教育局
大学振興課長 義本博司
国公私立大学間の積極的な連携を推進し、教育研究資源を有効活用することにより、地域の知の拠点を築き高等教育システムの強化を図る「戦略的大学連携支援事業」。文部科学省高等教育局大学振興課長・義本博司氏は、「大学の質的保証と機能別分化を促すために、大学間の連携は欠かせない」と語る。2008年度からスタートした同事業では、どのような新たな取り組みがなされているのか。現況と展望を伺った。
大学連携は各地で芽吹いていた
中央教育審議会の2005年「我が国の高等教育の将来像」において、我が国の少子高齢化の進展や通信情報技術の発達、グローバル化による国際的な競争などを背景として、大学間の連携と競争の重要性、多様な高等教育機関の機能別分化および個性・特色の明確化と質の向上、高等教育の質の保証など、我が国の高等教育機関のあるべき姿と課題が答申された。
その後、中教審のみならず経済財政諮問会議でも大学間連携の必要性が認識され、戦略的大学連携支援事業が2008年度からスタートしたわけである。
実際は、それ以前から全国各地でこの大学間連携の動きが芽生えていた。例えば、新薬の開発で、薬学と医学と工学それぞれに強みを持つ大学が連携するといった学際的分野での取り組みや、大学間の連携により他大学相互の設備を共同利用したり、カリキュラムの幅を広げるなど、教育的メリットを狙った事例。また、地域社会を巻き込んで大学間連携を行うという、地域単位での大学のコンソーシアム設立の動きなどが各地で数多く生まれていたのである。
そこで、国としてもこうした事業を支援していこうということになり、戦略的大学連携支援事業が本格化したわけである。
54件の連携事業がスタート
本事業では、2008年度の予算を30億円とし、総合的連携型の地元型と広域型、教育研究高度化型の三区分に分け、複数大学からの共同申請を募った。その結果、94件の申請があり、その中から54件を選定した。
その内容は極めて多様である。地域単位のコンソーシアムをベースに発展させるもの。そして教育と研究を共同で行い、共同の学位を取得するプログラムをつくるもの。または、異分野を融合して新しいタイプの研究を進めていくものなど、今までの枠組みにとらわれない大学の可能性を広げる様々な連携事業が始まっている。
例えば、総合的連携型では、神戸学院大学を中心に四大学が連携し、神戸のポートアイランドで防災などの取り組みを通して、安全・安心・健康に関する教育を地元に根ざして展開していく事業が選定された(30、31頁参照)。他にも、金沢医科大学と金沢工業大学による教育研究における医工連携事業などがある。
教育研究高度化型もバラエティーに富み、大きな可能性を秘めている。北九州市立大学、九州工業大学、早稲田大学の連携では、カーエレクトロニクスの高度専門人材を育成する事業が始まっている。また、徳島文理大学と香川大学、香川県立保健医療大学による事業は、香川県内の医療系学部を有する三大学の連携により、香川県の医療に関する知の拠点を形成し、地域に密着したチーム医療を実践できる高度な医療人の養成を目的としている。
学位プログラムを意識した取り組みもある。例えば、一橋大学と慶應義塾大学が連携して、EU研究の共同大学院を設置する事業である。その他にも、日本女子大学を中心とする五女子大学が、共同で教職大学院を運営するという事業もある(28、29頁参照)。
「戦略的大学連携支援事業」をスタートしたことにより、このような意欲的な取り組みが全国各地で始まっていることは、多くの大学に当事業の意義を深く理解いただけた証と考えている。
共同実施教育課程の可能性
今後の大学間の連携においては、それぞれの大学の強みを活かして機能を高めていくと同時に、機能の足りないところにおいては相互に補っていくという考えが非常に大事になるだろう。アメリカやイギリスの大学の教育改革のレポートを読んでも、その種の課題への取り組みが記されている。
一例として、共同実施教育課程の編成が挙げられる。共同実施教育課程の編成は、2008年の大学設置基準の改正で可能になった。
現在のところ、大学、大学院や短大間の同一学校種で学位取得のための連携が主に想定されているが、将来的には、様々な形での共同実施の教育課程が考えられる。大学と短大が連携するといった縦の連携が議論の俎上に乗ることだろう。
例えば、英語教育に強い短大が、大学と共同で英語教育課程を編成し、大学は短大に対して幅広い教養課程を編成するといった連携である。
また、学芸員や司書などの資格については、一つの大学で全科目を開設するのは難しい。そこで、複数の大学や短大が連携して、共同で教育課程を設けることも考えられるだろう。多様な形の共同実施教育課程のあり方について、中教審でも議論がなされていくのではないだろうか。
加えて、施設や設備や人的資源を共同で活用していくことも、これからますます重要になるはずである。研究の分野では、国公私立大学を通して共同利用の研究拠点を文部科学大臣が認定する制度が昨年からスタートし、人文・社会分野の研究施設について予算措置がついている。
教育の分野でも同様に、共同利用の教育拠点ができないか、今後中教審で議論が進むことだろう。例えば、留学生への宿舎や日本語教育の提供は、複数の大学が共同で行えばメリットは大きい。留学生宿舎をどうするかという問題は、様々な大学でお話を聞くことが多い。共同利用の仕組みの中で課題を解決することは、とても有効なことだと思う。
連携を持続し成果をあげるために
今回選定された事業に対しては、それぞれ最大の成果をあげられるように、文部科学省として支援していきたい。この春はスタートアップのシンポジウムや会合が多く開かれており、できる限り参加し意見交換をさせていただいた。ここから出てくる成果を検証し、学生や地域社会に役立つ連携に発展させていくことが大事だ。
本事業で成果をあげていくためには、大学間の連携をいかに持続していくかが、一つの鍵となるだろう。当初は各大学のトップや関係者の熱意でスタートしても、トップの間の意識のズレ等により、連携の足並みが乱れる危険性もある。緊密な連携を持続するために、トップのリーダーシップのもと、大学間の円滑なコミュニケーションや迅速な意思決定が行える体制をつくっていく必要があるだろう。
2009年度は、戦略的大学連携支援事業の予算を60億円へと倍増し、新たに30数件を選定する予定である。
昨年の12月に出た学士力に関する答申は、大学が相互に連携していかに教育や研究の質を高めていくかという課題に触れていることもあり、09年度の本事業の柱としては、大学連携による質的保証取組支援にも注力したいと考えている。
加えて、08年度は短大の応募が少なかったこともあり、本事業を積極的に利用して新たな事業に取り組んでもらえるよう、短大に呼びかけていくことも今後の課題である。
大学の機能別分化を進めていく観点からも、大学の質を保証する観点からも、大学間の連携は高等教育の政策の柱の一つである。こうした点からも、本事業を推進していきたい。
義本 博司 Hiroshi Yoshimoto
1961年生まれ。京都大学法学部卒。84年、文部科学省入省。初中局教科書管理課、高等局大学課、学際局国際企画課、福岡県教委義務教育課長などを経て、95年に在フランス大使館一等書記官。その後、初中局幼児教育課長、官房総務課広報室長、厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長などを経て、2008年より現職。
記事の内容は第19号(2009年6月1日発行)を抜粋したものです。
- 日本の将来を切り開き、新しい価値基準を創造できる自立性の高い人材を養成
- 学生、教職員、卒業生が三位一体となりグローバル化と地域貢献で使命を果たす
- 「夢」を原動力に世界と地域に貢献する
- 社会のあるべき姿を追求する「自立型人材」の育成が法政大学の使命
- 国際社会のオンリーワン大学を目指す
- 「責任ある教育」の推進が地域と世界に貢献するマグネット・ユニバーシティを実現する
- 学生のための改革で、教育責任と質の保証を果たすことが知識基盤社会構築を担う大学の役割
- 「戦略的大学連携支援事業」で特色ある大学づくりをさらに加速
- 5女子大学共同教職大学院運営モデルの構築
- ポーアイ4大学による連携事業
- 未来を担う若者をいかに社会全体で育てていくか