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留学生を親日家・知日家に育て日本の国益につなげることが必要
外務省広報文化交流部長
門司 健次郎
留学生受け入れは、外交上非常に重要かつ有効な政策
外国人が日本の学習環境の中で日本人とともに学び、日本社会に溶け込んで長期間生活するということは、日本に対するより深い理解を外国人に与えることができる。これは、親日家、知日家を多く誕生させる非常に有効な手段であると言える。
私自身のことを言えば、高校生のとき、自分の中ではあこがれの地であったアメリカに渡り、交換留学生として1年間学んだ。この経験が、その後の人生に大きな影響を与えてくれている。
また、開発途上国との関係で言えば、人づくりを通じて国づくりに協力し、彼らの開発を支援することにつながる。留学生を積極的に受け入れることは、外交上非常に有効であり、外務省も極めて重要視している。
「入口」と「出口」の部分で留学生を支援
留学生の受け入れのため、具体的に外務省が行っていることは、日本に来る前段階の情報提供や受け入れ準備、そして、母国に帰ったあとのフォローという、いわば入口と出口の支援である。
まず、日本に来る前の段階だが、留学情報の提供、国費留学生の募集、選考を各国の在外公館で行っている。日本留学についての情報提供の取り組みとして、主な大使館に「留学アドバイザー」を設置している。これは留学生として日本で学んだ経験があったり、日本の留学事情に詳しい人を、世界の48公館に配置し、日本の留学情報、生活情報などの提供やアドバイスを行っている。
今後は、まさにワンストップで日本の留学事情をすべて情報提供できる体制を構築すべく「留学生アドバイザー」の機能強化を図っていきたい。また国費留学生の一次選考は各在外公館のスタッフが、その国の人材育成にどのように貢献すべきか、将来のその国との友好関係構築に資する人材であるか等の観点を踏まえて行っており、その結果を日本に送って最終選考が行われている。このように「入口部分」に当たる在外公館の役割は非常に大きい。
次に、「出口部分」として、日本で学んだ帰国留学生の会に支援を行っている。現在、世界約160の地域に留学生帰国者の会がある。その活動を支援するとともに、会が設立されていない地域では設立支援を行っていく。
元留学生のネットワークを生かし、新規留学生を獲得
帰国留学生にかかわる取り組みとしては、この他に、ASEAN諸国の元留学生会の横断的組織である「ASCOJA(アスコジャ=元日本留学生ASEAN評議会)」と協力し、ASCOJAが派遣した留学生に対して奨学金を提供する事業を行っている。また、本国に帰った留学生は母国ではエリートとして重要な仕事を任されることも多いが、そうした元留学生を改めて日本に招待し、日本の産学官との人脈形成を促進する事業も行っている。
その他、途上国の人材育成のための事業として、それぞれの国の若手行政官などの人材育成奨学計画を無償資金により支援しており、2008年度は10カ国の266名の留学生を受け入れた。また、外務省およびJICAは、2003年度より国連大学を通じ、途上国出身の私費留学育英資金貸与事業を実施しており、対象者は、累計730名(2008年11月時点)に上る。さらに、インドネシアやタイ、マレーシアに対しては、円借款による留学費用の支援を行っている。
これらは、「留学生30万人計画」以前から、「人材育成を通じて途上国の国づくりを支援していく」方針のもと、外務省として取り組んできた事業であり、今後とも取り組んでいきたい。
日本のポップカルチャー人気も積極的に活用
外務省の広報文化交流部はまさに我が国の広報および文化外交を担う部門で、海外での日本のイメージを向上させることで政治・経済だけでなく、広く国益全般を増進させることを目的としている。とりわけ日本への興味のベースとなる日本語の普及については、独立行政法人国際交流基金が中心になり、「さくらネットワーク」という日本語普及の海外拠点を、いまの世界31カ国40拠点から100拠点に増やそうとしている。
また、麻生総理が外務大臣時代に提案し創設された「国際漫画賞」「アニメ文化大使」も当部の事業。2008年9月に第二回「国際漫画賞」の授賞式があったが、46の国と地域から368の作品の応募があった。「アニメ文化大使事業」では、103カ国において「ドラえもん」映画を順次上映している。さらに、民間で行っている国際マンガサミットや、世界コスプレサミットも外務省で後援している。
世界コスプレサミットは世界13カ国で予選会を開き、そこで勝ち抜いた人が日本に集結するという大がかりなイベントであり、予選段階の観客数が各国総計で40万人を超えるという。
これらは、一見すると教育とは関係なさそうだが、外務省は、マンガやアニメに対する関心の高まりは、日本の理解を深めてもらう好機ととらえている。特に、若者が中心となるわけで、これら日本文化紹介事業と留学情報提供事業との連携を考えている。
日本を知る人が増えるということは、外交政策上、非常に素晴らしいことであり、留学生事業も大変重要な取り組みとして、あらゆる機会をとらえて積極的にかかわっていきたい。
好感を持たれることが国益につながる
留学生ではないが、語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)も好調だ。1987年のスタート当初は英語圏の四カ国だったのが、2008年度は38カ国、約5000人の外国人教員が全国の中学校、高等学校で、単に英語のみでなく他言語での語学補助教員や国際交流支援要員として活躍している。
また2020年、観光客2000万人計画が展開されており、これからの日本社会が真の意味で国際化してくる時期がきたと考えている。これらのプログラムに共通した最も重要なことは、日本に対し「好感」やよい印象を持って本国に帰ってもらうことだ。
総合的に見ると、海外から日本への評価は非常に好意的だと考えていいのではないだろうか。経済的に豊かであり、文化も栄えている。古い伝統文化に加えて、最近では、それこそマンガやアニメなどの新しいポップカルチャーが世界を席巻している。さらに、平和国家であり、ある意味、国連憲章の前文に書かれている国家のモデルのような国と言っても過言ではない。国際貢献の実績も高い評価を受けているし、世界の中での日本の好感度は非常に高い。
これは、国の事業もそうだし、民間の交流においても、地道で誠実な対応が深く浸透していった結果だと思う。こうした取り組みを積み重ねていけば、自然と日本に対する評価がより一層広がり、海外留学生の増加といった結果に複合的につながる。そうした流れこそ、真に国益をもたらしていくのだ、と確信している。
門司 健次郎 Kenjiro Monji
1952年生まれ。75年東京大学法学部卒業、外務省入省。広報文化交流部長として、外国の国民、世論を対象とする広報文化外交を担当。外務省では、フランスで研修の後、国際協定課長、安全保障政策課長など専ら条約と安全保障を担当。在外は、オーストラリア、ベルギー、英国、EU代表部(在ベルギー)に勤務。2003年より条約局審議官、防衛庁(現 防衛省)防衛参事官(国際担当)を経て、07年3月より08年7月まで在イラク大使としてバグダッドに勤務。08年7月より現職。
記事の内容は第18号(2009年1月1日発行)を抜粋したものです。
- 留学生の受け入れは、日本の総力をあげて行うべき事業 (独立行政法人 大学評価・学位授与機構長 木村 孟)
- 新しい社会を創造する主翼を担うのが世界トップの「行動する大学」東大の使命 (東京大学総長 小宮山 宏)
- 公平で真に世界に開かれ、国際的に卓越した研究教育拠点を目指す (京都大学総長 松本 紘)
- 日本とアジアの「大いなる架け橋」となることが九州大学の国際的使命 (九州大学総長 有川節夫)
- 地域の特性を生かし、海外留学生のニーズに響く教育を (中央大学総長・学長 永井和之)
- 早稲田大学全体をグローバル化し世界の「WASEDA」を目指す (早稲田大学副総長 内田勝一)
- グローバル化は福澤諭吉の建学の精神そのもの (慶應義塾 常任理事 坂本達哉)
- 日本の社会を国際化に導く「静かなる社会革命」 (文部科学省高等教育局長 徳永 保)
- 留学生30万人計画策定にあたって (経済産業省 経済産業政策局長 松永和夫)
- 留学生を親日家・知日家に育て日本の国益につなげることが必要 (外務省広報文化交流部長 門司 健次郎)
- 「留学生30万人計画」成功の鍵は何か (明治大学 国際日本学部教授 横田雅弘)
- 海外留学生は日本の新しいイノベーションを担う大きな戦力になる (社団法人日本経済団体連合会 井上洋)
- グローバルな人材の獲得が企業の命運を分ける時代 (パナソニック株式会社 柿花 健太郎)