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女性を生涯にわたって応援し続ける大学を目指して

昭和女子大学
学長 坂東 眞理子
わが国において、女性の社会進出はどの程度進展しているのだろうか。確かに、あからさまな男尊女卑は影を潜めたかもしれないが、いまだ多くの場での男性優位傾向は継続していると言える。新時代の女性教育を推進する昭和女子大学の取組みについて、坂東学長に話を伺った。
現代社会において、女性の役割や立場は大きく変化してまいりました。また、少子化によって大学受験者数が年々減少していく傾向にあり、女子大学の将来を危ぶむ声もあります。しかし、それでもなお、女子大学ならではの大きな存在価値があると、私は考えています。
もし仮に、完全に女性差別がなくなり、女性と男性がまったく同じように扱われる社会になったとしたら、そのときは本当に女子大学の使命は終焉を迎えるでしょう。
ところが残念ながら、まだまだ日本の社会には、「女性だから」という理由で乗り越えねばならない課題が多く残っています。ですから、それらを乗り越える力や知恵を授け、応援していくためにも、女子大学は必要と言えるのです。
それでも、私が大学を卒業した頃よりはずいぶん進歩しています。当時は、女子学生に入社試験すら受けさせてくれない民間企業が数多くありました。1985年に男女雇用機会均等法ができて以降、女性を差別しないのは当たり前だという考え方が、徐々にではありますが、社会に浸透してきたと思います。
さらに、筋骨たくましい男性でなければできないような仕事はどんどん減少しているように思われますし、サービス業や情報産業において、外国語やコンピュータを操れる人は、男女を問わずニーズがあります。
そうした状況のもと、昭和女子大学としての強みを生かしながら、よりいっそう女性の成長に役立っていけるよう、教育内容の充実や新学科設置など、さまざまな改革に取り組んでいるところです。
国際人育成に向けた取組み
昭和女子大学の教育の特色としてまず挙げられるのは、伝統的に「国文科が強い」ことです。この強みを生かしながら、リベラルアーツ、いわゆる教養教育を基礎に据え、その上に専門知識を身につけた女性を輩出していけるよう努めています。
学部構成としては、国文科の流れを汲む「人間文化学部」、心理、福祉等を学ぶ「人間社会学部」、従来の家政科の系統である「生活科学部」、さらに短期大学部や大学院があります。
それぞれの学部、学科の充実を図る中で、大きな柱としては、国際的な分野を伸ばしていくことに力を注いでいます。例えば、最近は多くの大学が海外キャンパス運営から撤退していますが、本学ではアメリカのボストンにある「昭和ボストン」キャンパスを維持しています。
人間文化学部の中の「英語コミュニケーション学科」の学生は、全員必修でボストンに行って学んでいますし、他の学科でも、ボストンでの研修を選択することができます。
また現在、国際学科と健康デザイン学科を2009年4月にスタートさせるための準備を進めており、これに合わせて、国際教育をさらに強化していけるよう計画しているところです。方針としては、まず国際語としての英語は必ず身につけさせて、その上で、中国語や韓国語などアジア系の言語教育にも力を入れます。中国や韓国には提携校もありますので、交換留学なども含めて、英語とアジア言語を習得できるようにします。
さらに、国際教育を行う前提として、日本の社会や文化をきちんと勉強することも大切です。真の国際人となるためには、まず日本を知ることが不可欠ですから、これを東京でしっかりと学んだ上で海外に行くという順序になります。
地域連携と生涯教育
もう一つの大きな特徴は、キャンパスのある世田谷区と連携しながら、「学生が参加する地域の子育てプログラム」を推進していることです。07年度の「現代GP」に採択されたこの取組みは、学生の教育という意味でも、地域の子育て支援という意味でも、大きな成果をもたらしつつあります。
まず、「昭和チャイルド&ファミリーセンター」というNPOを組織しました。そして、世田谷区と「子ども・子育ての相互協力に関する協定」を締結し、区と大学とNPOが協働する地域住民の子育て支援活動を開始しました。
NPOでは、子育てを総合的に支援する施設「子育てステーション世田谷」を運営しています。ここには認定こども園のほか、お母さんたちが子ども連れで遊びに来て、息抜きしながらコミュニケーションを交わすひろばや、子どもを預かる一時保育施設などが揃っています。
本学の教員が発達相談や栄養相談に応じるなど、大学の支援も充実しています。また、保育士や幼稚園教諭を目指す学生が、ボランティアやアルバイトで活動に参加しています。学生たちにとっては、日頃教室で勉強していることを、保育や子育ての現場で実践的に学ぶことができます。
自分が実際にやってみることで、非常にモチベーションが高まるという効果があります。
これを足がかりとして、「サービスラーニング」にも力を入れはじめました。これは、ただ一方的な奉仕活動でなく、地域での学生の活動を、授業の一環として取り入れる学習方法です。計画中の国際学科では、これをさらに進めて、国内だけでなく途上国でのボランティア活動にまで広げていく構想を練っています。
そして、大学では再就職支援プログラムがスタートしました。結婚や出産で家庭に入り、子育てがひと段落ついた40歳前後の女性を対象に、再び社会に出ようとする意欲を応援する講座を用意しています。
最近の女子学生の傾向として、資格志向が非常に強いように感じられます。本学でも、保育士や栄養士、学校の先生など、学生たちは熱心に資格取得を目指して努力しています。
最初の話題とも関連しますが、社会において女性が男性とは違う扱いをされる中で、もちろん資格は役に立つわけですが、だからといって資格があるから通用するというわけでもありません。職場は決して生やさしいものではなく、資格を持った上で、直面する諸問題を乗り越えていく「パワー」が必要になるのです。
そのパワーを身につけるために、ボランティアやサービスラーニングは有効です。教室の中で与えられた勉強をするのとはまったく違った経験を積むことが、強いパワーを養うことに繋がるのです。
こうしたさまざまな教育プログラムを通して、私どもは、女性を生涯にわたって応援し続ける大学でありたいと願っております。
坂東 眞理子 Mariko Bando
富山県生まれ。東京大学を卒業後、1969年に総理府に入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事などを経て、98年には女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベン)となり、99年から内閣府初代男女共同参画局長を務める。2003年に昭和女子大学理事となり、04年には同大学女性文化研究所長および同大学大学院生活機構研究科生活機構学専攻教授を兼務。同大学副学長を経て、07年4月に同大学学長に就任し、現在に至る。『女性の品格』『親の品格』(以上、PHP新書)、『凛とした「女性の基礎力」』(暮しの手帖社)など著書多数。
記事の内容は第17号(2008年6月1日発行)を抜粋したものです。
- 大学改革と教育の可能性 (独立行政法人 産業技術総合研究所 理事長 吉川弘之)
- 大学改革の現在と未来 (文部科学省 高等教育局長 清水 潔)
- リスクを超えて進まねば成功には至らない (法政大学学事顧問 清成 忠男)
- 女性を生涯にわたって応援し続ける大学を目指して (昭和女子大学 学長 坂東 眞理子)
- 生徒本位の大改革―都立高校再生の歩み (東京都教育委員会 教育長 中村正彦)
- 企業人から見た大学経営 (学校法人名城大学 理事長 大橋正昭)
- 費用対効果を見極め、選択と集中を (広島大学 理事 清水敏行)
- 学生のため、大学の将来の発展に繋がる組織改革を (筑波大学 理事・副学長 吉武 博通)
- 財務施策を駆使し、発展に導く (早稲田大学 常任理事 小林 栄一郎)
- 第1回大阪大学・京都大学・神戸大学連携国際シンポジウム
- 大学の質とは何か
- 学生情報センターグループ「教育環境創造」活動の軌跡