トップページ > ナジックリリース > 第17号 > 第1回大阪大学・京都大学・神戸大学連携国際シンポジウム

歴史上初の三大学連携国際シンポ

関西から世界に通用する人材を育成し、世界に向けて「知」を創出、発信していく――京都大学、大阪大学、神戸大学が連携しての初の国際シンポジウム「三大学連携による知の創出と発信」が、2008年2月27日、大阪国際会議場で開催された。

このシンポジウムは、情報通信をはじめとした科学技術、文化、芸術等の振興に関する教育・研究事業を三大学が連携して行うことにより、卓越した研究者・技術者の人材育成に貢献し、関西の産業発展と地域活性化に寄与することを目的に、07年度から11年度までの5年間実施される。
本企画は学生情報センターグループとともに関西テレビ放送、産経新聞社の三大学への働きかけをきっかけに実現したものであり、「後援」は大阪府、京都府、兵庫県、関西経済連合会など九団体。

「協賛」には関西電力、松下電器産業など関西の代表企業が顔を並べた。当日は大学関係者や経済界などから約320名が参加し、会場は満席となった。

ソフトウェア技術者教育をめぐって

オープニングでは、今回のシンポジウムの委員長を務める鷲田清一・大阪大学総長を皮切りに、尾池和夫・京都大学総長、野上智行・神戸大学学長が挨拶。三大学が歴史上初めて連携したことの意義や、日本にとどまらず世界に向け三大学の「知」を発信しようとの抱負を述べられた。
今回のテーマは「ソフトウェア技術者教育」。第一部前半では、NTT西日本副社長・大竹伸一氏が、関西におけるソフトウェア技術者教育に対する期待を、また、ドイツのフラウンホーファー実験的ソフトウェア工学研究所所長、カイザーズラウテン大学教授・ディーター・ロンバック氏が、ドイツや欧州のソフトウェア工学分野の人材育成の状況をめぐって講演を行った。

「まず日本が取り組むべきことは、全体を見渡せる高度な技術者を、産学官共同で育成することだと思う。技術者の地位を上げ、スター性のある人を輩出することで、若者に選ばれる魅力ある職業になるだろう。その意味で文部科学省の『先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム』に期待を寄せている」(大竹氏)

「欧州のソフトウェア工学の教育は、何より実践重視が特徴。ベースになる科学も重要で、その上に技術者としての要素を築いていく教育システムである。ドイツの大学院のソフトウェア工学コースでは、教員の三分の二がソフトウェア技術者で、より実践的なケーススタディーを通じて、高度な技術者育成が可能になっている」(ロンバック氏)
第一部後半では、アメリカ、韓国、インドの招待者が、各国の現状等を紹介した。

「ソフトウェア工学の変化は激しく、常に技術者の再教育を行い、優秀なエンジニアを養成しなければならない。アメリカの場合、多様なバックグラウンドを持つ人たちがチームを組んで開発することが、良いソフトを生み出す強みになっている」(ポール・ニールセン氏〈カーネギーメロン大学附属ソフトウェア工学研究所所長:アメリカ〉)

「なぜ今ソフトウェア工学が重要なのか――医療も防衛も家電製品も、あらゆることがソフトに依存している。情報通信大学(ICU)が国家予算で設立されたのも、優秀なソフトウェアエンジニアの育成が、国の経済成長の要と考えているからだ。

ICTは揺籃期にあるが、産官学連携を早くから強めたことで良いスタートを切った」(ダン・ヒョン・リー氏〈情報通信大学ソフトウェア技術研究所所長:韓国〉)

「インドでは毎年約200万人がエンジニアになっている。とりわけ優秀なソフトウェアエンジニアを輩出することで知られるのがインド工科大学(IIT)だ。IITの教育の特徴は、自分独自の考え方を創造するプロセスを大切にしている点で、卒業生は世界のIT企業から高く評価され、就職先は多い。

企業も大学に協力的でインターンシップ制度を設けたり、ワークショップを開いたり、さまざまな活動を行っている」(ガルギ・キーニ氏〈タタコンサルタンシーサービス副社長:インド〉)

IT教育の実践と展開

第二部では、わが国のIT教育の実践について、筑波大学、東京大学、慶應義塾大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学の各グループによる発表が行われた。これら六グループは、文部科学省が支援する『先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム』に選定されている。

東京大学グループの竹内郁雄・東京大学教授は「先導的ITスペシャリストとは、統率力があり、世界に発信できるソフトウェアを創造できる人材。そこで基礎力、開発力、創造力を三本柱として、それらを養う『情報理工実践プログラム』を企画した。

完成したソフトウェアを携えてアメリカへ飛び、マイクロソフトなどに提案してソフトが通用するかどうかを試す『プレゼン武者修行』も実践する」と発表した。

第三部では、わが国の今後のIT教育の在り方についてパネルディスカッションが行われ、プロジェクトを客観的に評価する仕組みづくりや、小手先の技術ではない「将来への適応力」育成の重要性などが議論された。
この三大学連携国際シンポジウムは今後、将来的課題である防災や環境問題、文化財保護といったさまざまな分野において、三大学連携により世界の「知」を集積し、社会への発信に取り組んでいく。

08年度は京都大学、09年度は神戸大学が各々幹事校となり、シンポジウムのテーマや運営を担っていくことになる。関西の各行政機関、企業にとどまらず日本全国、国際的にも注目を浴びる三大学連携となるであろう。

大学改革提言誌「Nasic Release」第17号
記事の内容は第17号(2008年6月1日発行)を抜粋したものです。
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