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大学「連合」の時代、大学間、そして地域との連携

さまざまな目的を掲げた大学間の連携は、わが国だけでなく、世界中で進んでいると言ってよい。しかし「大学連携」といっても、その内容は多様である。市場化の中で厳しさを増す大学間の競争の中で、なぜ連携が広がっているのだろうか。

連携の三つのタイプ

大学間の連携を大きく分類すると、次の三つに分けることができるだろう。
一つめは「協力型」である。大学同士が、学生の履修した単位互換の協定などを結ぶものだ。単位互換の制度は早くから認められていたが、1991年の大学設置基準改正以降に、他大学と単位互換協定を結ぶ大学の数が増加した。

文部科学省の資料によると、単位互換制度を設けている大学は、98年度には123大学だったが、2003年度は512大学、05年度には548大学にのぼっている。

しかし単位互換制度は、所属する大学での授業が過密であると、学生が受講しにくいという現実がある。そこで例えば首都圏西部大学単位互換協定会では、単位互換からさらに発展させた「共同授業」を行っている。これは、同協定会加盟大学の教員が、「現代社会とヒーリング」「こころとからだの科学」など統一テーマのもと連携し、隔週土曜日に授業を行うものである。

共同授業では、神奈川県の県立高校生も受け入れており、高校生にとって、さまざまな学問分野への興味づけとなっている。また、高校教員と同協定会加盟大学教職員との間に接点が生まれ、高大連携についての協議が進められるなど、カリキュラムの枠を越えた自由な教育実践の場となっている。

第二は「コンソーシアム型」で、複数の大学が何らかの枠組みで、単位互換をはじめとする教育面での相互協力、あるいはさらに多様な協力を行うものである。その嚆矢となったのは、94年に結成され、98年に財団法人となった「大学コンソーシアム京都」だ。

もともとは京都市内の私立大学の単位互換を具体的な内容として始まったものだが、その後は社会人への大学開放、京都市の活動との連携など事業の幅を広げている。

国内各地域の大学コンソーシアムの情報交流・研究交流を図る協議会組織である「全国大学コンソーシアム協議会」に加盟する大学コンソーシアム組織は、2007年7月現在で38となっている。ほとんどの都道府県で、所在する大学同士がコンソーシアムを形成していることになるわけである。

しかし、行政の連携・関与という点で見れば、理事会等の運営組織に首長や商工会議所等が参画しているのは、学都仙台コンソーシアム、社団法人学術・文化・産業ネットワーク多摩、大学コンソーシアムせと、西宮市大学交流協議会、久留米学術研究都市づくり推進協議会、特定非営利活動法人大学コンソーシアムおおいた等、まだ少数である。それに連動して、加盟校と地元企業間でのインターンシップ実施も、決して多いとは言えない。

学術・研究に特化する等、設立目的によって状況は異なってくるだろうが、地域社会への貢献という意義を考えれば、今後、行政との関わり合いを、さらに密接にしていく必要があるのではないだろうか。

一方で、北海道大学と九州大学、京都大学と慶應義塾大学など、都道府県や国私立の枠を越えたもの、さらには「環太平洋大学協会」(京都・東京・慶應義塾・北京・ソウル国立・スタンフォード・UCLAなど37大学)や「国際研究型大学連合」(東京・北京・イェール・シンガポール国立など10大学)など、国境を越えた協定・コンソーシアム等は増加している。

第三は、「統合志向型」。例えば国立大学に設置された大学院の「連合農学研究科」は、一部ではあれ、大学の教育研究組織を統合したケースである。01年にいわゆる「遠山プラン」において国立大学の統合再編が、文部科学省の施策として取り上げられ、法人化後、統合が進んでいる。

全国大学コンソーシアム協議会

先に挙げた「全国大学コンソーシアム協議会」は、国内各地域の大学コンソーシアム(大学連合体・大学連携組織)からなる協議会組織で、各大学コンソーシアムの情報・研究交流を図り、わが国の高等教育の発展に資することを目的として、04年11月に発足した。

同協議会では、地域に根ざす大学はもちろんのこと、地域の歴史、立地、特性を背景として設立された大学コンソーシアムを、「高等教育機関と地域社会とが深く結びつき、大学の発展と地域の活性化を実現する取組み」と位置づけている。

さらに、世界的にも高等教育を構成する重要なシステムである大学コンソーシアムは、連携でこそ実現可能な新しい学びと、知の社会還元を実現する可能性を有していると考えている。具体的な活動としては、各大学コンソーシアム間の情報・研究交流を図るためのフォーラム(全国大学コンソーシアム研究交流フォーラム)の開催や、各種情報の集約と発信等を行っている。

07年9月15・16日の両日には、「第四回全国大学コンソーシアム研究交流フォーラム」が、広島修道大学で開催された。このフォーラムのメインテーマは「連携の意義を問う」。基調講演では、中国新聞社・社長の川本一之氏が、新聞社との連携について事例を交えて紹介し、続くシンポジウムでは、市川太一氏(広島修道大学教授・教育ネットワーク中国代表幹事)、川本一之氏、山口あおい氏(大阪市計画調整局都市再生振興部科学技術振興担当課長)、脇田寛氏(京都市総合企画局プロジェクト推進室大学政策・市民参加担当部長)が、連携の意義について熱く議論を交わした(司会:中村三春氏〈山形大学教授・大学コンソーシアムやまがた〉)。

同フォーラム期間中には、「単位互換を中心とした大学間連携」「大学コンソーシアムを中心とした地域学への取組み」「FDとSDの課題と展望について」など五つの分科会も開催され、また、ポスターセッションも行われた。

競争と連携の矛盾?

現在、高等教育をめぐる状況は、競争的環境にあると言える。「21世紀COEプログラム」や「特色ある大学教育等支援プログラム」などに示されるように、社会は国際的な水準の教育研究を求めており、高度な内容には積極的な評価と資金が提供される。

大学制度も国立大学法人化に見られるように、学長や諸機関の位置づけの変更等、民間的手法による大学運営のあり方が要求される時代でもある。

そうした中で、大学は個性や総合力をさらに強化することにより、生き残りをかけて鎬を削っている。いわば自校より他は全てライバルと言える状況の中で、なぜそうしたライバル同士が手を取り合い、協力していく動きが加速しているのか?

高等教育の基本的なパラダイム転換が求められている今日、そうした相対比較だけではなく、新たなニーズに対応しうる根本的な質的転換が重要になってくるであろう。今後、高等教育は多様なステークホルダー(学生・社会人・地域・社会等)に対して、多様な教育サービスを提供していくことが求められる。

こうした考え方から大学連携の現状を見直すと、期待されるいくつかの役割が見えてくるのではないだろうか。

「品揃え」と「マーケティング力」

最も分かりやすいのは、連携によって「品揃え」効果が生まれることだろう。経済学の言葉で表現すれば「幅の経済(Economy of Scope)」である。例えば大学間の単位互換協定によって、学生が選択できる授業の幅が広がることになる。特に小規模大学では教養課程の教育で一定の幅の授業科目を揃えることは大きな負担となる。

また、専門課程でも、特殊な領域の科目を学びたいという学生のニーズに応えることができる。大学院教育や研究面でも、多様な領域間での活動が可能になる。

もう一つは「マーケティング力」効果である。高等教育を、大学教育の機会に対する需要(受験生)と供給(大学)という関係で捉えれば、4年制大学に限っても、約60万人の需要に対し、約700の供給が対峙する、極めて巨大な市場である。この中で大学は、より多くの、より高い資質を持った学生を惹きつけるために、激烈な競争を行っているわけである。

大学側が需要(受験生)を惹きつけるために取りうる手段には限りがある。何らかの形で受験生の認知を得ることが、大学にとっては重要な課題となってくる。特にコンソーシアム型の大学連携に期待されているのは、こうした効果ではないだろうか。

例えば大学コンソーシアム京都は、京都市内では学生を奪い合うかもしれないが、全国的に見れば、京都の大学の存在をさらに印象づけ、全国からの受験生を京都に惹きつける意味で、重要な役割を果たしている。

地域ニーズの掘り起こし

こうしたマーケティング力は、学部への入学者だけに効果を発揮するものではないはずだ。各大学にとって、地域のニーズを掘り起こすことは、受験生の関心を得ることよりも難しいことかもしれない。

地域をベースとした大学連携は、そうした意味でマーケティング力発揮の強力な手段となりうるのである。
事実、社会人や地域住民に向けて講義を行う公開講座を実施する大学は、年々増え続けている。
文部科学省の「生涯学習推進のための地域政策の調査研究」報告では、大学と地域の連携が、まちづくりにつながるための条件の一つを、次のようにまとめている。

「大学と地域の連携によって地域住民への生涯学習支援が進むことは望ましい。しかし、それがまちづくりへとさらに展開していくためには、生涯学習のテーマや内容が地域社会の抱える課題を共に解決する方向に向かう必要がある。大学は地域課題への取組みにおいて傍観者的なアドバイザーにとどまらず、学生をも資源としながらサポーター・パートナーとしての役割を果たすことが必要となる」

地域なくして大学は存在しえない。大学間の連携だけではなく、今後は、地域ニーズや行政をも含めた「連合」のスタイルが、大きな力を発揮するはずである。

もちろん、一者だけが恩恵を享受するのではなく、全パートナーそれぞれにメリットが生まれる「ウィン・ウィン」の関係へと発展させることは必須条件である。そして「一大学だけではできない教育の実現」を目指していかねばならない。

大学改革提言誌「Nasic Release」第16号
記事の内容は第16号(2008年1月1日発行)を抜粋したものです。
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