トップページ > ナジックリリース > 第14号 > 人事革命で一貫教育の未来を拓く (学校法人東海大学 法人企画調整機構 学務局 杉 一郎)
人事革命で一貫教育の未来を拓く
法人企画調整機構 学務局
初等中等教育部部長 杉 一郎
人事制度改革こそが救世主
東海大学は、2004年度より他大学に大きく先んじて教職員人事の新システム「教員総合人事制度」を試行、2006年度より本格実施に踏み切った。人事制度については、これまでも国公立・私立ともにその必要性が認識され議論の対象となってきたにもかかわらず、いざ実施の段になると多くの学校が及び腰になってしまう状況が続いた。
その理由は、評価の正当性に対する懐疑、旧来の凝り固まった人事体制への諦めといった障害に対して、時間制限を設けてまで取り組もうという危機感を募らせた責任者が現れなかったからではなかろうか。
同大学・杉一郎部長は、学園全体の未来を拓くためには一貫教育の価値を認めてもらうこと――つまり、入学から卒業までに生徒がいかに高い付加価値を得ることができるか――を生き残りのための最重要課題に置き、全教員の能力の底上げを喫緊の課題とした。そのための最良の策が、教員総合人事制度であるという。
「東海大学の人事制度の特徴は、教員を成長させるための環境づくりを第一義としている点にあります。今さら教員の指導力向上など当たり前のことではないかと思われるかもしれませんが、実際に抜本的な対策を講じて結果を出している学校は少ないように思います。
我々は、人事考課制度、資格制度、給与制度、能力開発制度といった四制度を柱に用い、教員が自発的に能力開発に取り組む仕掛けを作り上げようとしているのです」(杉氏)
もちろん、初等中等教育機関における教育力の底上げと並行して、同大学への進学率増加のための対策も求められる。
東海大学では、付属高校からの選抜メンバーと同大学教授が合宿を通じて学問の醍醐味を知る「東海大学学園オリンピック」の実施、大学への体験留学を前提に高校を二学期制とするなど、独自性の高い取組みに積極的だ。
仕組みは緻密に実行は大胆に
前述の四制度は、いずれも教員総合人事制度を推し進めるには欠くことのできない歯車である。人事考課制度は、自己申告と業績評価により目標を設定した後、教員と考課者が面接等を行い、個人の能力開発と組織の活性化を図るためのものである。また、資格制度を設けることで独自の昇格審査が可能になり、関連する給与制度に則して資格に応じた給与を付与する仕組みが整う。
能力開発制度では、資格等級や役職に応じた研修会、また、考課者研修を年に約20回の頻度で行い、評価する側とされる側のレベル向上を怠らない。
「ただし、これらの制度を効果的に運営していくためには、制度以外の施策も必要になります」と杉氏。「中でも特に大切なのが、学校の規模や教員の年齢構成、専任・特任・非常勤教員の比率など各校園の特質を把握し、教員数の適性化を図ることです。適時に適材を適所に配置してはじめて、教員総合人事制度は有効に機能すると考えています」
それでなくとも、私立校は公立校に比べて教員の異動が少ない。中には教員の定年を70歳近くに設定している学校もあるというのだから、人事面での風通しがよいとは決して言えない状況だ。杉氏は、人材の流れが「澱んだ」私立校の現状に警鐘を鳴らす。
「新たな人事制度を導入する目的は、教員が互いに『育ち、育てる関係』を築くことにあるわけですから、教師としての経験はもちろん、専門性や雇用形態等について著しい偏りがあると、新たな関係性が育ちにくいのです。特に私立校は、給与等の処遇も含めて人材活用の悪しき常識に一石を投じる時機に来ています。すでに本学では、必要とあらば付属校間の教員の異動を奨励し、各校園にとって最良の教員構成を常に評価・検討しています」
教員の危機感が明暗を分ける
「私立校の、さらに言えば一貫教育のウリとは何でしょうか。授業の進め方に常に工夫があること、行き届いた生活指導を行うことを二本柱とし、何より独自性の高い教育を実施できることでしょう。
こうしたパフォーマンスができない教員には、時間制限を設けたうえで課題に取り組んでもらい、他の教員、保護者、学生からの評価を受けながら一定の成果を要求します。
その意味では、いったん校長の任に就いた教員であっても、いち学校の長として結果を残せなければ速やかに役職を降りていただくことにためらいはありません。すべての教員が必死に取り組む環境が必要なのです。それができない学校に、未来はないと思っています」(杉氏)
全国に四幼稚園、一小学校、六中学校、15高等学校、3短期大学(部)、3大学を有する同学では、幼稚園から高校までの教員だけで総数800人に上る。一人あたり一時間近くをかけて行うという面接を考えただけでも、正当な評価のために膨大な時間と労力が必要であることは想像に難くない。
「教育力の向上」という古くて新しい課題に対し、「人材活用」という高い合理性を持った観点で改革を推し進める東海大学。杉氏の「他の学校が真似できるような制度をつくって実践しても、大きな成果は望めない」との言葉には、他大学から一歩抜きんでんとする強い意思と、すでに成果を見晴るかしたかのような自信が感じられる。同学の新たな試みは着手されたばかりだが、今後の一貫教育のありかた、当事者の意識に波紋を投げかける事例となり得るか、その前途は注目されねばならない。
記事の内容は第14号(2006年5月11日発行)を抜粋したものです。
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