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大学の知が経済を活性化させる!
大学連携推進課長 中西 宏典
TLO(技術移転機関)への取り組み
現在経済産業省では、経済の活性化の観点から、TLO(技術移転機関)を中心として、大学の研究成果を社会に役立てることに取り組んでいます。
TLOの活動は、簡単に言えば、大学にあった知的資産を特許化し、それを民間企業に移転しようというものです。すでに41のTLOができるとともに、昨年度は30億円弱のロイヤリティー収入もあり、着実に成果を生みつつあります。
技術の移転については、必ずしも即商品に関わるものだけではありません。企業はこの10年くらい景気が悪く、大企業も含め従来やってきた基礎的な研究をやめざるを得なくなってきていました。
しかし、基礎的な研究もやはり続けなければなりません。そこで、基礎研究を大学との共同研究で行おうという動きもかなり出てきています。さらに、大学の知的活動の成果物についても、TLOを通じ産業界で使える可能性を模索しております。
経済産業省では1998年に法律を作り、TLOをサポートしながら大学の知的な発明を特許化し、それを民間企業に移転を促進するということに取り組んできましたが、また同様の取り組みとして大学経営の観点から知的財産本部ができてきました。大学内に設けられた知的財産本部に関しては、1部にそれができたことでTLOと重複しているという話が聞かれます。
国立大学が独立法人化されたために、従来は6対4くらいの割合で先生個人に特許が帰属していたものが、原則、大学が機関として管理することとなり、知財を管理するための知財本部が設けられました。企業と先生の間に大学つまり知財本部が介在するようになったため重複していると見られることがあります。
もっとも我々としては、大学の職員の方がこれまで経験もない民間企業とのロイヤリティーのレートの交渉など、技術移転の交渉をするよりも、その部分については経験のあるTLOを使っていただいたほうがいいように思っています。つまり我々としては、協力して取り組んでゆくほうがさらに大きな成果につながると考えています。
大学発ベンチャーの推進
2005年の3月末で、大学発ベンチャーは1112社になりました。売上げで約1600億円、1万1000人の雇用が生まれていると推計しています。ともすると大学発のベンチャーはあまりうまくいっていないとの認識があるかもしれませんが、マクロな面で見れば、大学発のベンチャーからもそうした成果が出ているのです。
もっとも、必ずしもうまくいっていないところがあるのは事実です。1112社の方にアンケート調査をした結果、戻ってきたのが約350社でした。回答があったうちの半分強は、「まだ製品を世の中に出していない」ということでした。つまりまだ1円のお金も稼げていないわけです。この面では普通のベンチャーに比べるとかなり厳しい状況です。
とはいえ、1112社の内の12社がすでに株式公開をしています。また公認会計士を入れて株式公開の準備をしているというところが20社弱あると聞いています。通常のベンチャーより成長性が高いと考えられます。
3年間で大学発ベンチャーを作るということについてはまずまずうまくいったと思います。経済産業省としても少しばかりですが、大学発ベンチャーの研究開発への支援を行ってきました。
しかし今後は、数というよりも、質のほうに転換をしてゆく必要があると考えています。
例えば、我々が一つひとつの大学発ベンチャーを支援するということは、かなり数が増えてきた現在、とても難しくなってきています。
そこで、我々としては、それぞれのベンチャーを支援するというのではなく、大学発ベンチャーを様々な角度から支援するようなネットワークづくりに力を入れたいと考えています。2005年よりネットワークの形成事業として約1億円の予算を組んでいます。ベンチャーを支援する制度、仕組み、ネットワークがあれば、ベンチャーのさらなる成長、発展が促されるはずです。
産学官連携関連の新たな挑戦
今後の新たな取り組みとしては、マッチングファンドがあります。これは企業と大学が共同で研究をする際には3分の2を国が支援するという施策です。それはもちろん大学発ベンチャーであっても構いません。
要は大学の研究成果が民間企業に移転する、実用化することを支援するためであり、我々としては31億円という予算を組んでいます。それから、大学のドクター保持者やドクターコースで学んでいる方に対するフェロー制度を整備することも考えています。従来は研究開発をやるための人材をフェローとして雇って派遣するものでした。それを研究ではないエリアでも活躍できるようにキャリアパスを多様化しようというわけです。
そういう経験をしていただくことで、仮にその研究者が大学に戻って研究を続けても民間企業と上手く連携ができるようになるという効果も期待できます。どうしても従来の産学連携というと、共同研究のハードの面に偏ったところがありました。しかしこれからは人材育成の面にも力を入れなければならないと思います。
最近、産業界からは、大学で即戦力になるような学生が育っていないのではないかという声もあって、経済産業省としては、そうした人材育成にもつながる施策も是非展開したいと考えているのです。
その1つのやり方として製造業において中核となる人材を育成する事業をスタートしました。これは、産業ごとの人材ニーズを明確にした上で大学と複数の企業がコンソーシアムを作り、大学は教材やカリキュラム、さらにはコースを設けたりします。
実践的な力をつけるために産業界の現場を使わせてもらってインターンシップの実施や、現場で経験を積めるようにもします。そうして企業が必要とするような人材を輩出できるようなプログラムを作ってゆくというわけです。これに対して23億円の予算を付け2005年度から始めているところです。
大学の知の成果が社会の発展、繁栄に役立つことを、社会もたいへん望んでいると思います。もちろんそこには手間暇もコストもかかりますが、社会全体としては絶対にプラスになることです。
これは社会貢献の一環であり、各大学には、教育、研究に次ぐ大きなミッションの1つであると認識いただき、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
記事の内容は第13号(2006年1月1日発行)を抜粋したものです。