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大学と企業の「知的資産」に「価値」を創造する

財団法人知的資産活用センターに聞く

2002年7月に策定された「知的財産戦略大綱」。わが国の産業競争力低下への懸念から、「知的創造サイクル」の確立の必要性を提唱し、知的財産立国の実現に向け、①創造戦略、②保護戦略、③活用戦略、④人的基盤の充実を具体的な戦略として打ち立てた。

この「大綱」を受け、文部科学省は「大学知的財産本部整備事業」を推進、実施機関として全国四三の大学等で蕫知財本部﨟が稼働している。技術移転機関(TLO)整備事業と相俟って、知財立国へ向けた順調な滑り出しかに見えるが、成功事例が少ない、成果が出にくいなど、道のりは未だ厳しいのが現実だ。

大学と産業界のマッチングを図るべく2004年に設立された財団法人知的資産活用センターを訪れ、理事長・増永保夫氏と専務理事・田代慈邦氏に、財団設立の目的や意義、今後の展望などを伺った。

「財産」ではなく「資産」

――財団名にも冠されている「知的資産」とはどのようなものでしょうか?

増永理事長(以下敬称略) たとえば企業の場合、貸借対照表に表れる資産、つまり簿価の値より、株価に表れる評価のほうが遙かに高いことがよくあります。この差は何だろうかと、我々はここから始まっているんです。

田代専務理事(以下敬称略)現に学術研究もあるんですが、その「差」というのが知的資産の有無だと。したがって、我々は目に見える財産だけではなく、見えない「資産」まで把握する必要があるだろうというわけです。

――目に見えない「資産」には、どのようなものがありますか?
増永) 企業や大学など、その組織が持つノウハウやブランド力、このあたりは非常に価値が大きいものです。
田代) 企業の場合ですと「契約」も知的資産の範疇です。当社はどこそこの会社と契約を結んでいますとアナウンスすることによって、「あ、あそこはすごい」となる。

つまり契約の存在が株価を上げるのです。契約の存在とは即ち、契約できるだけの力が備わっているということですから、そこに評価が集まる。したがってそれは立派な「資産」だというわけです。
増永) 知的財産を扱う企業、公益法人等はすでにいくつかありますが、知的「資産」まで扱えるのは当財団だけだと自負しています。

ミス・マッチを解消

――具体的な事業スキームは?

増永) 大学はもちろんですが、企業サイドとしては、中堅企業、中小企業をターゲットに活動してゆこうと考えています。というのも大企業にはそれなりの体制が整備されていますから。

中小企業が大学から技術を受け入れる。また、中小企業と大学間の共同研究、受託研究等も、徐々にですが増加しています。ここに我々が何かお手伝いできないだろうかということです。

田代) ミス・マッチングの例も多いんです。大学の研究は原則として基礎研究ですから、特許といっても、そこから応用研究、実用化研究と、いくつかのハードルがある。

中小企業が大学から特許を買ったとしても、実用化に漕ぎ着ける力がない。それ以前によく検討してみたら、欲しいものと違ったとか……。共同研究にしても注力できる資源に限りがあります。

――宝の持ち腐れになってしまうと。

増永) そこで我々が一役買いたい。ある中小企業が新しい分野に進出したいという時に、自分たちが持っているコア技術の延長線上で価値を生む特許なり技術の取得に向けたアドバイスをさせていただく。

田代) 中小企業というのは、大抵の場合、いくつかのすばらしいコア技術を持っているものです。そのコア技術を軸に、新しい事業を展開する場合に何が足りないか。それを判断し、大学から探すべきなのですが、現実にはうまくゆかないことが多いようです。

その点、我々はマーケットを見ていますし、技術や特許のデータも持ち合わせています。ですから「あなたの会社の狙いはここですね?でしたら、この大学のこの先生の、こんな技術はいかがでしょう?」といった情報を我々のポートフォリオの中から提供できれば、ミス・マッチという悲劇も少なくなると思うのです。

――いわゆる「知財人材」の育成も急務の課題です。

田代) マーケットを睨みつつ、特許・技術に精通している、そんな「特許の目利き」、そして大学と産業界の「仲人役」を担える人材を育成するための研修等に取り組んでゆきたいと思っています。

増永) 俄に現実的になってきたのが、大学と産業界のマッチングにおける金融機関の役割です。

――三菱UFJフィナンシャル・グループが九州大学と知的財産信託に取り組み始めました。 

増永) 信託を利用したファイナンスでは、言うまでもなく銀行が重要視されます。我々はそうした金融機関の方々に対する知財人材育成セミナーや研修プログラムの開発にも着手してゆきたいと思います。

知的創造サイクルの駆動力として

――展望をお聞かせください。

増永) 知的財産整備事業に該当せず、まだ知財本部がない大学。また、私設で知財本部を整備した大学。そうしたところに対するサポートも、我々の活動の大きな柱となってゆくことでしょう。

また、大学の知財戦略を学生募集戦略にリンクさせるなど、大学の「知的資産」を核に、大学経営のサポートも手がけてゆきたい。そして、産業界に対しては、中小企業の支援を軸に、わが国産業の発展に寄与できるよう、取り組んでゆきたいと思います。

田代) 「知的財産戦略大綱」でいうところの「知的創造サイクル」。これには「創造」「保護」「活用」というポイントがあるのですが、中でも「活用」が従来、手薄だったように思います。非常に消極的な活用の仕方、あるいはあくまで防衛的な活用をしていたということです。

そこで、当財団が有効な「活用」、つまり、きちんと価値を生み出せる知的資産戦略をご提案してゆきたい。そしてさらに、この知的創造サイクルを回し続ける力、ドライビング・フォースになりたいと思っています。

増永) 先般、当財団が主催となって、「日中両国の大学における知的財産権人材の育成と産学連携」という日中知財セミナーを開催しました。中国は知的資産に関しては後発です。我々が国内の大学や企業に行おうとしている支援が中国でも実現すれば、もっと伸びるはずです。

強大なポテンシャルを秘めている中国は、今後、さらに強くなってきますので、特許だけでもたくさん出てくると思います。大学と企業だけでなく、国境を越えた橋渡しということになれば、それこそ国際貢献ということになるのかもしれません。

大学改革提言誌「Nasic Release」第13号
記事の内容は第13号(2006年1月1日発行)を抜粋したものです。
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