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拝啓大学殿~国際基督教大学編~

往信

●1年次から英語での講義を行われていると聞いていますが、バイリンガルでない一般の学生でも、講義内容を十分理解することはできますか? また、特にどの学問分野において、英語での講義を重視されているのですか?

●貴校では、外国人教員をどのくらい採用されていますか? また、どこの国の方が多いのですか?

●卒業生の進学・就職状況について教えてください。貴校は、米国の大学に見られるように、四年間で教養的な知識と素養を幅広く身につけ、その後、専門性の高い学問を習得させるというイメージがあります。やはり、大学院進学や海外留学を選択する学生が多いのでしょうか?

●学問は、学際化とともに専門化が進んでいます。貴校が取り組まれているリベラルアーツ教育により、十分な専門性を身につけることは可能ですか? 特に高度な専門知識と技術を必要とする理科系分野については、どのような対策をとっておられますか?

●ユニークで質の高い教育をされており、今後も大学における蕫国際教育﨟の旗頭であっていただきたいと思っております。ただ、関西の高校においては知名度が十分とは言えず、志望する生徒が少ないのが現状です。知名度アップを図るための対策を考えておられますか?

・浦和明の星女子高等学校 清宮 宏先生
・横浜雙葉高等学校 鈴木幸憲先生
・東京都立国立高等学校 矢作俊郎先生
・大阪星光学院高等学校 野出明敬先生
アンケートより作成

返信
アカデミックな議論が可能な英語力が身につきます

国際基督教大学教授 学務副学長
森本 光生

国際基督教大学(以下ICU)は、1953年の開学以来、真の国際性を有する人材を育成するため、当時、世界共通言語として認知されていた英語の教育に並々ならぬ力を注いできました。そのイメージからか、入学当初に高いレベルの英語力を持った学生でなければ授業についてゆけないのではないか、といったご質問をよくいただくのですが、決してそのようなことはありません。 

本学の英語教育の大きな特徴は、「英語『を』学ぶ」だけではなく、「英語『で』学ぶ」ことを目的としている点にあります。所属学科にかかわらず、全学生が1年次の大半と2年次の1部を使って22単位にも相当する英語教育プログラム(ELP:English Language Program)を履修し、大学での学びに必要な英語能力を習得します。

その先にあるのは、英語「で」学問をすること。卒業までに最低九単位の「英語での講義」をICUや海外の提携校で受けることが必修となっています。本学で開講される「英語での講義」には、例えば「シェイクスピアを英語で読解し、議論する」といった比較的スタンダードなものから「日本の民芸を英語で学ぶ」のように独創的なものまで様々な内容の科目があり、学生はこれらの授業を英語「で」学ぶことになります。

つまり、ICUの英語教育の目的は、ただ英語を話せるようになればよいというのではなく、英語を使って、様々な学問分野についてアカデミックな議論を行うことができる力を身につけることにあるのです。なお、本学では全教員のうち約30%を外国籍の教員が占めており、特にELPに関しては、その割合が50%にのぼります。世界中から広く採用を行っていますが、現時点ではアメリカ国籍の方が最も多数です。

主に1年次で英語の素地を作り、その後、より深い英語力が身につくよう段階的なカリキュラムを組んでいますので、たとえ高校卒業の時点で英語を十分習得できていなくても、英語でのコミュニケーションに意欲がある方であれば、尻込みせず、ぜひICUの門を叩いてみてください。

7通りの入試選考で、多彩なバックグラウンドを持つ学生を募集します

ICUでは、他大学が実施しているような大掛かりな広報活動を行っていません。そのせいもあり、関東方面ではある程度、知名度が確立されているとはいえ、特に関西以西においてはご質問にある通り、本学の特色や長所を十分にアピールできていないのが現状です。そこで、2000年から広報活動の範囲を日本全国へと拡大してPRに努めるとともに、これまで以上に多様な受験生を受け入れることができるよう入試選考を整えてきました。

これまでは、教養学部において創造的な学習ができるかどうかを試験する「学習能力考査」を基本とした本学独自の一般入学試験を中心に、本学が指定したキリスト教主義の高校を対象とした推薦制度や帰国生の特別入試といった選考を行っていました。

昨年度からはそれらに加え、AO入試(ICU特別入学選考)を開始し、今年度からは大学入試センター試験を導入します。昨年実施したAO入試は、第1回目にもかかわらず定員20名に対して212名の出願をいただき、大きな成果をあげました。この他にも社会人特別入学試験および9月入試を併せると、全部で7通りの入学選考を設けており、様々なバックグラウンドを持つ学生を受け入れるべく態勢を整えています。

国内外を問わず、大学院への進学率が高いのが特徴です

ICUの卒業生のうち、約20%が国内外の大学院に進学します。これは、他大学と比べても高い割合と言えるでしょう。
本学では、すべての学生が海外経験を持つことを目標に、2005年度で21カ国・56大学と交換留学に関する協定を結んでいます。海外の大学院へ進学する学生の中には、かつて留学した大学への進学を希望するパターンも多く見られます。

一方で、就職希望者の就職率についても例年、ほぼ100%を達成しています。特にマスコミ業界への就職者数が10%前後と多いこと、また卒業者の約10%が海外に在住していることも特徴です。進学と就職、いずれの進路を選んだ場合にも言えることですが、学部の4年間で得られる知識量には限りがあります。

では、それぞれの道を進んでゆくうえで必要とされることは何かというと、それは常に問題意識を持ち、自分で考え行動する力であり、また、異文化にある相手とのコミュニケーション(プレゼンテーション)能力であると思います。光栄なことですが、進学先や就職先の担当者からは、ICUの卒業生はこうした能力に優れた人材が多いという評価をいただいています。

リベラル・アーツが目指すのは、「責任ある地球市民」の育成です

長引く不況と就職難を反映してか、昨今は、すぐに役立つ、あるいは資格取得に結びつきやすい技術の習得が優先されています。それに付随するかたちで学問や教育分野においても細分化、専門化を是とする風潮が見られ、各大学は総じてリベラル・アーツを放棄しつつあります。

リベラル・アーツは物事を広く浅く学ぶ教育方針であると捉えられがちですが、本来の目的は、社会の諸問題について自発的に考え、責任を持って行動できる人材を育成することにあったはずです。旧来の社会の枠組みから脱却し、新しい視野に立って行動する――ICUは、そうした自由人の知識基盤を築くために、引き続きリベラル・アーツを堅持し続けます。

理科系分野において、果たしてリベラル・アーツにより十分な専門性を担保できるのかというご質問をいただいていますが、一般教養科目との両立で、専門分野の学習が疎かになることはありません。むしろ、広範な知識基盤の上に専門教育を受けた学生たちは、異分野を専門とする相手とも円滑にコミュニケーションを行うことができる、優れた専門家に育ってゆきます。

ICUでは、講義を進めるにあたり、各教員が「小道具」を用います。例えば、学生が毎回、授業内容に対する疑問や意見をまとめるコメントシート(質問表)、教員が教室内を歩き回り、学生から意見を引き出しやすくするためのタブレット式机(一人用の折畳み式机)など。

これらの小道具が、講義において活発な議論を生む引き金となり、学生のクリティカル・シンキング(批判的/批評的に物事を考える力)を養うためのツールになるのです。また、学生指導について、特筆すべきは「アドヴァイザー制度」の存在でしょう。1人の教員が約30人の学生を受け持ち、学習の進捗状況から進路希望まで、個々の相談にきめ細かく対応します。

教員が受け持つ学生は、所属が全六学科にわたっており、興味の対象も様々です。
例えば、「韓国の文化に関心がある」と相談に来た学生に対して、「まずは中国の文化が韓国にどう影響しているか調べてみては?」と多角的な見方を提案する、韓国の提携大学校への留学を勧めるといったアドヴァイスを行うことはもちろん、より専門性の高い質問があれば、適切な教員を紹介するなどのフォローも行います。

その他、語学科と国際関係学科、理学科と教育学科というように、2つ以上の領域にまたがった学科間専攻も推奨しています。ICUの学生は、こうした仕組みの中で学科や専修の枠を越え、自らの関心に応じた学問を追究してゆくのです。

高校生の皆さんには、早い段階で進路を限定してしまうことなく、大学へ入学してから出合う未知の選択肢も含めて、自分が本当に究めたい物事を確実に選び取ってほしいと思います。
ICUであれば、その選択肢は多様に存在していますし、またそこから、真にリベラルな地球市民として生きる素養が身につくこともお約束します。

大学改革提言誌「Nasic Release」第13号
記事の内容は第13号(2006年1月1日発行)を抜粋したものです。
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