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大学改革トピックス

広大な土地を求めて都心部を離れ、郊外へ移転する大学が相次いだのも今は昔。一転、都市中心部へとキャンパスを移す大学が目立ち始めた。そうした大学は、キャンパスを都心へ移す効果、あるいは移転により派生する新たな組織の構築について、いかなるビジョンを描いているのか――。

2006年以降に都心部へキャンパスの移転を予定している神戸学院大学、名古屋学院大学、神戸女子大学のご担当者に詳しい話を伺った。
いずれの大学も、キャンパス移転は改革の一環であるという。共通する「狙い」は、①入学希望者の確保、②地域社会・産業との連携強化、③事務組織の合理化、の3つに集約される。

キャンパス都心回帰は、学生および研究資金の確保のために、あるいは魅力ある大学づくりのためのカンフル剤となるか?

神戸学院大学
田園型と都心型の魅力を併せ持つ

神戸の都心部からほど近いポートアイランドは、神戸空港のオープンを控え、海、空の玄関口としてさらなる発展が期待される地域である。神戸学院大学(神戸市、眞弓忠範学長)は、2007年4月からこの地に4学部(法学部、経済学部、経営学部、薬学部)の新キャンパスを構える。

新設の理由のひとつは、2005年に総合リハビリテーション学部を開設、また、2006年に薬学部が6年制へ移行する状況を受け、手狭な現、有瀬キャンパス(神戸市西区)での拡張が困難になったことにある。2003年に工場等制限法が撤廃され、予てからの移転・拡張計画の実行が可能になった。

神戸市の西端に位置する現キャンパスは、閑静で自然の豊富な、教育環境としては申し分ないという印象を受けるが、宮本常務理事(事務局長)は「交通手段がバス利用で混雑が激しいことと、キャンパスが手狭になってきたことが、学生確保にあたって大きなネックであると考えています。

実際に、神戸の都心部にある他大学と比べ、京阪地区からの志願者が少ないのが実状ですから。このたびのポートアイランドキャンパスの新設によって、入学希望者数が大きく増加すると見込んでいます」と話す。

新キャンパス設置後は、現在の有瀬キャンパス、法科大学院のある長田キャンパスを含めた三つのキャンパスを包括した改革を推進してゆく考えだ。

本部機能はワンストップ対応で合理化

新キャンパスで学ぶ4学部の学生も、教養教育は現キャンパスで受講する。
学年でキャンパスを移動する、いわゆる「学年移転」の形態をとるわけだが、比較的カリキュラム等を組み換えやすい「学部移転」の形態のほうが合理性の点では勝るように思われる。

この点について宮本常務理事は、「確かに、各教員はシャトルバス等を使ってキャンパス間を頻繁に移動しなければならず、労力を必要とします。

一方で、学生にとっては教養教育の間をともに過ごすことで学風を共有し、よい意味での仲間意識を持つことができる利点があります。後に専門性の高い学問を深めていくうえで、これらは大きな財産になるはずです」と話す。

カリキュラムの調整等をはじめ、キャンパス移転に際して生じる事務作業量は膨大であると想像される。移転について、学内における反対意見が当然、あったのではないか。

「キャンパスの移転および拡充は、もともと理事長、学長のもとで進めてきたものです。ただ、具体的に着手するにあたり、法人説明会はもちろん、数え切れないくらい何度も学内会議の場を持ちました。
現段階でも、移転にともなうメリット・デメリットについて逐一議題に挙げ、各担当部署の運営がスムーズにゆくよう確実にコンセンサスを得て進行しています」(宮本常務理事)

移転を契機に、事務組織のスリム化にも取り組み、新キャンパスの事務室(学生・教務・管理などの業務)は原則としてワンフロア・ワンストップでの対応を、また、大学全体の各種会議や管理運営・学籍管理などの統括事務は現キャンパスで執り行うよう役割が整理される。両キャンパス間はネットワークで結ばれ、迅速な情報共有が徹底される。

神戸市、他大学との連携のかたち

移転先であるポートアイランドの用地には、同大学の他にも後述の神戸女子大学、夙川学院大学、兵庫医科大学等が、2006年から順次、新キャンパスを設置する。

神戸市による地域活性化策「神戸際都キャンパス構想」では、神戸における新たな学際拠点として、発展が期待されている。同構想は、五つの「際」(水際・まち際・国際・学際・業際)を巧みに取り入れた21世紀型の新しい都市空間の中枢を目指すものである。

さらに、同大学は阪神・淡路大震災の震源地に最も近い大学として、他大学にはない想いと特色を持ち「地域とともに学ぶ」ことに重きを置いてきた。

2007年から新キャンパスで展開される「防災・社会貢献」に関わる人材育成を図るプログラム(2005年「現代GP」に採択)も、そうしたモットーを反映してのものである。

「都心にキャンパスを設置することの最大の狙いは、産業界・行政機関との連携を強化し、これまで以上に実践的な教育を行うことにある――産官学連携はもちろん、社会人入学や生涯学習などの新たな教育・研究の充実を図るうえで、大きな成果が期待できると見込んでいます。

大学間交流も当然、視野に入れており、四大学間でこれからの連携を進めています。一例として財団法人大学コンソーシアム京都のような、横断的な交流が可能な仕組みを構築してゆきたいと考えています」(宮本常務理事)大学・地域間交流が生み出す、神戸ならではの「連携」に注目したい。

名古屋学院大学
都心環境を最大限にアピール

名古屋学院大学(瀬戸市、小嶋博学長)は、現キャンパスの3学部(経済学部・商学部・外国語学部)すべてを、2007年に新設予定の名古屋キャンパス(白鳥学舎・日比野学舎)へ移転する。現在の瀬戸キャンパスには2006年度に新しく設置する人間健康学部で、約1000人が学ぶ予定だ。

いわゆる「学部移転」の形態を採用し、原則として学生がキャンパス間を移動することは想定していない。教育・研究に用いる図書資料等の利用については、2つのキャンパス間を定期便で結び、必要な情報が迅速に得られるようシステムが整えられる。

キャンパス移転の狙いについて総合政策部部長・永井氏は「ひとつには、交通の利便性が増すことで、通学圏の拡大と入学希望者の増加を見込んでいます。

さらに、大学生活の4年間は多くの出会いがある多感な時期であることを考えると、都心部での生活は、文化的刺激を比較的享受しやすいという点で、学生にとって大きな魅力に繋がると考えています」と話す。

同大学の場合、通学の利便性が高まれば、特に東海・中部圏に住む学生にとってより身近な存在になるであろうことは想像に難くない。
加えて、地域との交流を推進するうえで具体的な方策も掲げられている。

「名古屋キャンパスは、白鳥・日比野両学舎ともに地域活動の場として広く地元市民に利用していただけるよう計画しています。外国語学部の学生を中心に、国際交流を推進するための場を設ける、あるいは生涯学習支援のための公開講座設置、学生によるまちづくり活動の推進、学内の図書館や食堂を市民に開放する等、新たな試みにも取り組んでゆく考えです」(永井氏)

こうした学術的交流にとどまらず、学生に地域の一員として自覚を持たせるためのサポートも行う。また、近隣住民に新キャンパス設置の説明会を行い、学生の交通・生活マナーの遵守を明言する徹底ぶりだ。地域から認められる大学になり得るか――名古屋学院大の手腕が試される。

神戸女子大学
学部新設にあわせ新キャンパスへ

須磨離宮公園のほど近く、自然に恵まれた立地にある神戸女子大学(神戸市、河上誓作学長)は、文学部と家政学部の2学部体制で運営を続けてきた。2006年に1学部1学科の新設、および組織改編に着手するにあたり、現キャンパスの敷地が手狭になったことを受け、ポートアイランド内に新キャンパスの設置を決めた。

ポートアイランドキャンパスには、新設の健康福祉学部の学生約2840人が就学する。新設後は、隣接する神戸女子短期大学とも、従来なかった大学・短大間の交流に積極的に取り組む考えだ。

新学部の設置について文学部長兼学長補佐・今井氏は、
「健康福祉学部の目的は、福祉関係の各種資格取得だけにとどまりません。福祉の持つ役割を広く捉え、日常生活において様々なレベルで人の幸せを支えることができる多様な人材の育成を目指します」と、新学部の社会的意義を話す。

新キャンパスでの教育・研究にあたっては、もちろん神戸医療産業都市構想への参画も視野に入れている。様々な医療・福祉現場と連携し、福祉分野の管理職として活躍できる社会福祉士や保育士、介護福祉士などの育成に取り組んでゆく。

加えて地域との繋がりなくして、これからの新しい福祉教育を行うことはできないとの認識から、社会人入学制度等を整え、生涯学習の拠点にしたいとの構想も持っている。

各キャンパスを繋ぐ司令塔

同学は、須磨キャンパス、ポートアイランドキャンパス、短期大学の他に、活動拠点としてセミナーハウス(ハワイ)、教育センター(神戸市三宮)を有している。それら全体を統一的な教育理念でまとめるために、2006年4月より新たな組織体「神戸女子大学教育研究センター(仮称)」を設ける。

「本センターの機能は、各学部・学科に固有の専門性を尊重しながらも、大学全体に共通する建学の精神を反映した教育方針を企画立案・実践することにあります。

そこで提起するコア・カリキュラムを各学部・学科に降ろし、それぞれの専門教育とリンクさせている――こうしたシステムを活用することで、中規模の大学だからこそ実現できる学際的でユニークな研究に取り組み、大学の特色として打ち出してゆきたいと思います」(今井氏)

複数の活動拠点を持つ大学が増え、教育・研究形態が多様化するなか、大学全体の方針を支える、「司令塔」は、大きな存在となりそうだ。

押し寄せる薬学部新設の波
差別化のための具体策は?

今、なぜ薬学部なのか? 2003年に端を発した薬学部、薬科大学の新設ラッシュが今なお続いている。資格取得を目指す学生にとって薬学部人気は高く、中には学生確保のいち方策として設置に踏み切る大学もあるだろう。

新設増の背景には学校教育法、薬剤師法の一部改正による規制緩和があったとはいえ、薬剤師の需要については早ければ2010年に頭打ちになると試算されており、このままのペースで新設が続けば、薬剤師の供給過多を招く危険が指摘されている。

こうした状況を、薬学部を有する諸大学はどのように受け止めているのか。本誌では、京都薬科大学と広島国際大学の両校に、自学薬学部の展望とあわせ、率直な意見を伺った。

六年制か、四年制か

厚生労働省では、2006年4月からの入学生を対象に、薬剤師養成のための薬学教育について医・歯学部と同様、6年制への移行を義務づけた。薬剤師の資格を必要としないMRや医薬品販売に携わる人材育成、また、研究者を目指す学生のために4年制の設置も引き続き認められる。

こうした状況で、各大学が今後どのような人材を輩出してゆくか、どんな教育方針を打ち出すかといったスタンスの再確認を迫られることは必須であろう。
薬学系の単科大学として120年の歴史を誇る京都薬科大学の西野武志学長は、学内での協議についてこう語る。

「6年制と4年制を併設するか、もしくは6年制1本に統一するかについて、学内での意見は真っ二つに割れましたが、本学は6年制全面移行の道を選びました。6年制移行に反対する先生方にしてみれば、いわば『薬剤師の養成大学』になってしまうことへの危惧が強くあったと思われます」

西野氏は続ける。
「ただ、学生からすれば薬学部に入学して薬剤師の資格を取得できることは大前提だろうと思います。本学としては、高度な薬学専門知識をいかした先導的な研究に取り組み、臨床面のみならず、創薬科学、環境科学、社会科学等の分野にも貢献できる人材を育てたい。

ならば、『6年制=薬剤師育成コース』と決めつけるのではなく、研究者の育成のみならず、研究的視野を持った薬剤師の育成を目指してゆくべきだという結論に至ったのです」


薬剤師が担う社会的役割

2010年にも薬剤師の需要が飽和に達するとの予測について、各大学は対策を講じているのだろうか。薬剤師需要の試算を、薬学業界における発展的要素と捉えているのが広島国際大学・冨士薫薬学部長である。

「薬学部ラッシュについて、否定的な意見が多勢を占めますが、むしろ私は歓迎すべきであると思っています。薬剤師の絶対数が増え、需要が変わらないのであれば、厳しい競争を勝ち抜いた、本当に能力のある薬剤師が揃うはず。これが、ひいては業界全体の財産になってゆくと思います」

さらに冨士氏は「今後、人材育成、教育方針等について明確なビジョンを持たない大学は運営を続けてゆくことが困難です。本学は、豊かな感性と心を持ち合わせた『人間味あふれる薬剤師』の育成を掲げています。

また、薬剤師という職業は今後、医療現場ではチーム医療の一員として専門性を発揮し、薬局等では、『薬のコンサルタント』としてお客様1人ひとりにきめ細かいサービスを提供するなど、活躍の場がより広く深くなる。

そこで、本学では医療福祉学部、保険医療学部等、他の医療系学部との連携を積極的に図り、ハード・ソフト両面で特長をいかした教育を実践してゆきます」と抱負を語る。

各大学に求められるのは、薬学・薬剤師教育に対する社会のニーズを捉え、それに応えるべく教育方針とガバナンスを構築すること――この実行力が成否を隔てるに違いない。

大学改革提言誌「Nasic Release」第13号
記事の内容は第13号(2006年1月1日発行)を抜粋したものです。
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