トップページ > ナジックリリース > 第12号 > 実績に裏打ちされた客観性で質的向上に貢献する (財団法人大学基準協会 澤田 進)
実績に裏打ちされた客観性で質的向上に貢献する
大学サバイバル時代
――官主導による認可主義は終わり、自己責任による改革を第三者機関が評価する制度がスタート。
60年近く評価事業に携わってきた、大学基準協会の見解を聞いた。
事務局長 澤田 進
聞き手◎ ナジック総合研究所
大学評価義務付けまでの流れ
――2004(平成16)年4月から、すべての大学は第三者機関による評価が義務づけられました。経緯はどのようなものでしょうか。
澤田局長(以下敬称略) 歴史的には、明治政府が、近代国家建設の担い手となる官僚を養成するために、「許可主義」という形で大学を管理したことに端を発しています。この時代、政府は私立学校に対しても、補助金を出す代わりに厳しい認可条件を課すという、いわゆる「飴と鞭」で管理するようになりました。
戦後、政府による高等教育の画一化が、軍国主義化につながったとして、国が高等教育の設置等に深くかかわらないよう、アメリカ教育使節団が指導。
そこで、国に代わって大学の設置基準を自主的に作って審査する「大学基準等設定連絡協議会(大学基準協会の前身)」が、1947年に設立されたのです。その後、大学等の設置は「認可主義」に改まりますが、1956年からは、「大学設置基準」という形で、再び国が高等教育の設置に深くかかわるようになりました。
やがて時代は移り、1991年には、大学設置基準が大幅に緩和され、大学側に「自己点検評価」という努力義務が課せられました。しかし、ほどなく自己点検のあり方に疑問が投げかけられ、1998年になって、第三者機関から客観的評価を受けることが努力義務とされました。
この方針がさらに進展して、従来国が厳しく管理していた設置認可については、一定の要件を満たしていれば、特例を除き認可されるようになり、その代わりに、全大学が国から認証された第三者機関から評価を受けるよう義務づけられたのです。
大学基準協会の評価基準
――国家的な「百年の計」の流れに、常に寄り添ってきたと。
澤田) 当協会は、国公私立の四年制大学を会員校とする「自立した団体」としてスタートしました。そして、入会するための「大学基準」を自主的に作ることによって、「正会員として入会すること」が、「その大学の質を保証する」ことにつながるという運営方針を打ち出しました。
その後、国が大学設置基準を定めてからは、当協会の大学基準も都度改正し、わが国の大学の教育や研究の質的向上に役立てるよう取り組んできました。
そして、今回の義務化に際して、これまでの長い実績と取組みが認められ、いち早く認証評価機関として認証されるに至ったわけです。
――どのような方法、内容で大学を評価していますか?
澤田) まず、大学基準協会の正会員になろうとする際、大学は「加盟判定審査」を受けます。さらに、加盟して五年後に第一回目の「相互評価」があり、二回目以降は七年ごとに「相互評価」を受けることになります。
加盟判定審査も相互評価も、評価の流れはほぼ同じですが、正会員校に大きく成長していただくため、相互評価のほうがより厳しい内容に設定されています。評価の基準となる指標として、『「大学基準」およびその解説/学士課程基準/修士・博士課程基準』を独自に作成しており、これらに照らし合わせて評価作業が行われます。
評価手順の第一段階は、当協会が定めた項目について、大学が自己点検・評価を行い、「点検・評価報告書」と「大学基礎データ」という二種類の調書を提出していただきます。
第二段階は、判定委員会・相互評価委員会の下部組織である各分科会による評価です。さらに、第三段階として、実地調査を行い、その結果に基づいて最終判定を行います。
最終判定と評価を伝えて、もし大学側に意見があれば、申し立てができます。その上で必要に応じて「勧告」「助言」を行い、基準に満たない場合は「否」「保留」といった通知を行います。これを受けて、大学サイドは課題解決に取り組み、改善状況を報告する、というのが基本的な評価の手順・サイクルです。
――「加盟判定審査」と「相互評価」という二つの基準は、端的に「わかりにくい」のではないでしょうか。
澤田) 確かに評価機関の認証を受ける際、議論はありました。ダブルスタンダードの問題は、現在理事会でも議論しており、私見ですが、いずれは一本化することになると思います。ただし、相当の時間がかかることは確かです。
それでも、当協会の役員や、実際に大学評価を行う評価者は、一定の資格要件を備えた大学の代表、あるいはその大学で教育に携わった方々から公正かつ透明性のある方法で選出しており、意思決定の客観性は担保しています。
また、現在の評価方法を確立して八年になりますが、評価者はこれまでに約600名を選出。評価項目や点検方法については継続的にトレーニングを積んでいます。ですから、基準が二つあるからといって、あいまいな審査を行うことは絶対にありません。
――先の三月には、第三者評価が義務化されてから初めての審査結果を公表されました。
澤田) 申請のあった35校のうち、33校は大学基準に適合すると判定しましたが、残りの2校は保留としました。また、適合と判断した大学のうち23校には、定員過剰や財務上の問題を理由に改善勧告を行っています。
――厳しいですね。
澤田) 大学基準協会には、蓄積された「大学基礎データ」を参考にできる「強み」があります。正会員としてどういう水準が望ましいか、評価対象となる大学の状況、現在の水準はどうか、どういう理念を持って運営されているか、といったことを判断する比較資料が非常に豊富です。
この強みがあるからこそ、改善勧告もできる。逆に、当協会の正会員として認められれば、一定の評価を得たことになるのです。
求められる評価機関の水準向上
――大学基準協会以外にも「大学評価・学位授与機構」「短期大学基準協会」「財団法人日本高等教育評価機構」などの組織が発足していますが。
澤田) 今後は複数の認証評価機関が、それぞれの特徴、基準で評価を行い、各大学は、自校に適した認証評価機関を選ぶようになると思いますし、複数の機関が切磋琢磨する状況は健全です。
ただし、われわれ以外は、すべて発足したばかりであり、これからしっかりとした基盤を構築されていく段階に、今はあるといえるでしょう。
当協会では約600名の評価者を選出していると述べましたが、この評価者の人数とレベルを維持するのが、認証評価機関にとって最も困難かつ重要な課題。この点に関して、われわれには一日の長があると自負しています。
――大学評価における先達として、ノウハウやデータを他機関に提供することは考えられますか?
澤田) 私は一向に構わないと考えています。というのも評価の項目やフォーマットなどが、各機関によってバラバラだと、結局は評価を受ける大学が困ることになるからです。
実際すでに、他機関との連絡会を発足して協議を始めており、今後、いい方向に向かっていくことでしょう。
一つ申し上げさせていただくとすれば、現時点で、他の評価機関が打ち出されている評価項目は、全般的に見てわれわれほどのシビアさが、まだないという印象を禁じ得ません。
もちろんこうしたことも、互いにノウハウを共有することによって改善するものと考えていますが。
今後の大学のあり方
――現在の大学はどういう問題を抱えているとお考えですか?
澤田) 例えば大学基準協会には「財務状況」という重要な評価項目があります。いくら教育や研究のレベルが高い大学でも、財務状況が悪ければ、いずれは立ち行かなくなる可能性があると考えているからです。そのため、これからの時代、大学も自己責任の意識を高めて「運営」ではなく、「経営」にあたる必要があるといえます。
さらに各大学は、目標や目的が本当に達成できているかどうかを、自らが客観的に評価する姿勢が求められると思います。そうした自己管理能力を養うために、「自立」そして「自律」の精神を身につけていただきたい。
教育・研究に対する熱い思いを持って、断固として改革に取り組んでいかなければ大学はいずれ淘汰されます。
今後は国の顔色をうかがうのではなく、自らの裁量で改革を進め、それを堂々と第三者機関に評価させればいい。良い方向へ変化しようとする気概があれば、評価は必ずついてくるものだし、逆に、何もしない臆病者が評価を闇雲に恐れてしまうのです。
澤田 進 Sawada Susumu
1933年生まれ。56年、中央大学経済学部卒業。71年に中央大学人事課長、72年に同大学理工学部事務長。88年、学長室長、94年、総合企画室長。2001年より現職。その他、1979年、日本私立大学連盟研修事業委員会中間管理職研修運営委員会委員長。83年、日本私立大学連盟第7回海外大学経営セミナー副団長。84年、同管理職研修運営委員会委員長。92年、同調査委員会委員長。99年、私学データバンク推進会議座長。著書に『私立大学のマネジメント』(共著・第一法規)などがある。
ポイント
戦後の学制改革の時代から、大学の水準維持向上に尽力。長年にわたり蓄積されたノウハウと豊富な人材の活用で、客観性の高い評価活動を実践。三月には認証評価機関として最初の評価結果を公表。
評価は「加盟判定審査」と「相互評価」のダブルスタンダード。将来的には一本化も示唆。評価者は累計600名を選出し、評価品質の維持にも努めている。
大学は、自らの裁量で教育体制や財務体質の改善・改革を図らねばならない。必要なのは、教育に対する気概と「自立・自律」の精神だと主張。
記事の内容は第12号(2005年5月15日発行)を抜粋したものです。
- 評価文化が大学改革を動かす (独立行政法人 大学評価・学位授与機構 川口昭彦)
- 実績に裏打ちされた客観性で質的向上に貢献する (財団法人大学基準協会 澤田 進)
- ミッションを重視した評価で個性を引き出す 財団法人日本高等教育評価機構 原野幸康 伊藤敏弘
- 競争力の高さが信用獲得のカギに (スタンダード・アンド・プアーズ 吉村真木子)
- 格付けが対話力を上げる (株式会社 日本格付研究所 殿村成信・吉田法男)
- 大学はガバナンスの整備を急げ! (オリックス株式会社 会長兼グループCEO 宮内義彦)
- 多様な価値観が豊かな人間性を育む (神戸大学 学長 野上智行)
- 「新しい産学連携教育の形」を目指すキャリア開発プログラム (亜細亜大学アジア夢カレッジ推進室部長 加藤伸吾)
- 同窓会の一体化で教育理念の強化を目指す (玉川学園・玉川大学 同窓会事務部長代理 宮川 正氏)
- 学生と教員、双方のニーズに応えるキャリア支援 (麻布大学学生部就職課課長 高橋 徹氏)
- 大学スポーツでコミュニケーション能力を獲得 (明治大学硬式野球部監督 川口啓太)
- 学校法人と個人情報保護法 ~個人情報保護で学校法人の「品位」を保つ (株式会社イーエムエスジャパン 深田博史)
- “一人ひとりを大切に”真の学生満足を (学校法人麻生塾 専務理事 古野金廣)