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大学はガバナンスの整備を急げ!

リーディングカンパニー経営者から見た「大学マネジメント」の課題

昨今、日本の多くの大学が「改革」を標榜しているが、経営、教育内容ともに根本的な改革に成功している大学がどれほど存在するだろうか。評価にも格付けにもガバナンスが大きく影響する。
早くからコーポレート・ガバナンスを重視し、企業改革を進めているオリックスCEO宮内氏が、大学経営の本質に迫る!

オリックス株式会社
会長兼グループCEO
宮内義彦

コーポレート・ガバナンスとは

私が会長を務めるオリックス株式会社の取締役会は、全12名のうち5名までが、当社以外の組織に所属する「社外取締役」である。現在の日本企業の中で、この割合は特に高いとされているが、これは、当社が早い時期から「コーポレート・ガバナンス」を重視してきた姿勢の表れといえる。

コーポレート・ガバナンスとは、株主の代理としての取締役が経営者を監視し、組織が目的に向かって適切に運営されているかを監督するシステム、およびそのシステムを軸にしたマネジメントのことである。

企業経営においては、業務執行機能と監督機能を分離させて、第三者が客観的に監視・監督するほうが、より健全で効率的な運営が可能となるのは明白だ。本来なら株主総会がそうしたチェック機能を果たす役割を担っていたはずだが、株主と経営者との間の情報量のギャップが大きいため、わが国だけでなくアメリカでも株主総会は形骸化している。

そうした流れの中で、アメリカでは取締役会が経営者の業務執行を監視する仕組みを取り入れるのが一般的となった。日本はこの面で後れをとっていたが、近年のグローバル化にともないガバナンス推進の動きが強まり、これを後押しする改正商法が2003年に施行された。

オリックスでは、国内の法改正の動きよりも先んじて、コーポレート・ガバナンスを重視し、1997年6月には、外部の有識者・専門家を迎えて諮問委員会を設置した。

その後、執行役員制の導入、社外取締役の招聘を経て、商法改正と同時に、取締役会内に監査委員会・指名委員会・報酬委員会を設置して、いわゆる「委員会等設置会社」に移行したのである。

前述の通り、取締役会には社外取締役が参加し、当社の活動全体をしっかりと監視・監督していただいている。現代の多くの企業は、こうしたシステムを導入し、より高いレベルで目的達成に取り組む経営体制の構築を始めた段階といえよう。

企業の目的とは、平たくいえば、社会に価値を提供して利益を生み出し、株主に貢献することに他ならない。そして、このように目的を持って活動する組織にとって、コーポレート・ガバナンスは重要な意味を持つようになったのである。

変われない大学の現状

それでは大学という高等教育機関の目的とはいったい何であろうか。また、大学の「経営」に、ガバナンスを持ち込むことは可能なのであろうか。

私自身、母校である関西学院の理事や、「21世紀大学経営協会」の理事長を務め、高等教育に密接した活動に携わっている。そのため大学の問題はいつも切実に考えているのだが、残念ながら、わが国のほとんどの大学は、「目的意識」が希薄であると言わざるを得ない。

改めていうが、ガバナンスとは、組織が目的を達成するための統治・監督およびマネジメントのシステムであるから、目的が明確でない状態でガバナンスを導入しても意味がない。

例えば、「そこそこの学生を集めて四年間楽しく過ごしてもらい、そこそこの企業に就職させる」。このような極めて漠然とした「運営」を続けている大学が多いように見受けられるが、この程度のことは、あえて大学が掲げるべき目的・目標ではない。

大学を「経営」する人たちは、目標を具体的に議論し、それに向かって断固として改革に取り組まなければならないはずだ。昨今の大学改革などは、企業が生き残りをかけて取り組む改革に比べると、微々たる動きにしか感じられない。大学および大学関係者は、従来通りの居心地のいい器の中で硬直してしまい、動けなくなっているのではないか。

断固たる改革とスクール・ガバナンス

大学が変われない原因の一つに、「教授会」の弊害がある。
あえて厳しい意見を言わせていただくが、どんな世界でも「実務者の能力」と「経営者の手腕」はまったく別物であり、教授として優れている方に、大学という組織の「経営」が可能かどうかといえば、大いに疑問を感じざるを得ない。

「教授会」によって大学が適切に運営されるという幻想の結果、いつの間にか大学が「教授の教授による教授のための」住み心地のよい別世界となってしまっていないだろうか。

また、根本的な問題として「学校は誰のためにあるのか」ということも、今一度考え直していただきたい。学校は、紛れもなく社会と学生たちのために存在する組織・団体であり、教授の方々が地位と名誉を獲得し維持する場ではない。

もちろん私欲のない素晴らしい教授もたくさんいらっしゃるとは思うが、そうした方々が、経営者としての資質を持っているかどうかはまた別の問題だ。

大学がまず行わなくてはいけないのは、「明確で具体的な目的・目標を持つこと」である。目標ができれば、それに向かって健全かつ効率的に改革を進めるためのスクール・ガバナンスも、大きな意味を持つようになる。

例えば、「野球部を強くして、野球で全国的に有名になろう」という目標を立てても一向に構わない。それならば、優れた指導者を招聘したり、グラウンドの建設に資金を投入したりするなどの施策を講ずることになろう。

あるいは「経済のある分野に力を入れて優れた人材を輩出する」のなら、その分野における日本一、いや世界一の教授を高年俸で引き抜き、その能力を最大限発揮できるように、大胆なカリキュラム変更を行えばいいだろう。

教員の雇用に関しても、能力最優先で人選するようにしなければならない。研究室の外の世界を体験していない方々よりも、はるかに広く豊かな知識を持つ人材は、民間にいくらでもいる。そのような人たちを積極的に登用していけば、大いに活性化するはずだ。

大きな改革を断行しようとしても、過去のしがらみにとらわれた「内部の人間」には、自ずと限界がある。だからこそ、外部の血を取り入れたガバナンスが不可欠となるのだ。

そうすれば、これまで目立たなかった大学が、一流の仲間入りを果たすことも可能だ。逆に小手先の施策に終始していては、一流大学であれ一気に転落してしまうこともあり得る。高等教育界も、すでにそういう時代に突入したということを認識していただきたい。(談)

宮内義彦 Miyauchi Yoshihiko

1935年、神戸市生まれ。関西学院大学商学部卒業後、ワシントン大学経営学部大学院修士課程(MBA)を卒業。60年に日綿實業株式会社(現双日株式会社)に入社した後、64年にオリエント・リース株式会社(現オリックス株式会社)に入社。取締役、代表取締役社長、代表取締役会長を経て、現在は取締役兼代表執行役会長・グループCEOを務めている。自社以外では、富士ゼロックス株式会社取締役、株式会社あおぞら銀行取締役、昭和シェル石油株式会社取締役、ソニー株式会社取締役、株式会社大京取締役、規制改革・民間開放推進会議議長、社団法人日本経済団体連合会評議員会副議長などを兼務。

大学改革提言誌「Nasic Release」第12号
記事の内容は第12号(2005年5月15日発行)を抜粋したものです。
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