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大学改革ストラテジー これが大学の生きる道《第三回》
官公庁本部・戦略グループ
シニアマネジャー 榎原 洋
戦略を決めた。ガバナンスも整備した。次は組織能力(ケイパビリティー)の強化である。
いらないモノはサッサと捨てて、コア機能に重点投入――単なる外注スキームではなく、戦略的アウトソーシングを駆使しなければ、組織はダブつく一方だ。
ネコの手を借りる
「忙しいかって? 決まってらい。こちとら、ネコの手も借りてぇくらいだよ、全く」
古今亭志ん生あたりの小咄ではなくて、あくまで大学のお話なのだが、まずはイントロとして企業経営論から確認しよう。
従来のわが国の企業経営は垂直統合型、自前主義が主流で、終身雇用を前提として人材、資源を内部化し、各部門のプロフェッショナルを育成することにより差別化を図ってきた。
企業行動の中には業種や業態に応じた独自の方法が存在することも否定しないが、一方で国際会計基準を筆頭に、これほどまでにグローバル・スタンダードが進展する昨今にあって、「実は汎用化できる部分が多いのではないか?」と考えてみる必要は大いにあるだろう。
民間企業は現在、「定型化・共通化」と、「高度な専門性」が必要なのであり、その習熟と維持にコストを要する業務については、当該業務を専門とする外部資源に委ねたほうが、コスト・パフォーマンスの点からは望ましい――これがアウトソーシングの根幹である。
翻って、数年前まで大学ではアウトソーシングというと、「あっ、外注でしょ?」という認識が支配的だった。冒頭のセリフに象徴される状況の中、ネコの手を借りたいけれど借りられない(滅相もない)。あるいは借り方が分からないという按配で、いち担当者が捌かねばならない業務は雪ダルマ式に膨れあがってしまい、必然的に効率が著しく低下するというわけだ。
戦略的アウトソーシング
民間企業の多く、おそらく大学であればそのほとんどが、「人手不足解消」と「コスト削減」を目論んでアウトソーシングを検討することだろう。そこで、一部個人レベルの現行業務だけを、ただアウトソース(というより旧来の『外注』)のスキームに対応させるわけだが、残念ながらそれでは規模効率の面からもメリットは出にくい。
先の「定型化・共通化」でいえば、溢れた業務を取り繕う形で外注するのではなく、職員の業務を精査し、処理や決裁等、定型化・共通化できる業務を見極め、それらを集約するオペレーション・センター(OC)の設置と絡めて、可能なものはOC業務の対象として大括りにアウトソーサーに提供させる。こうした「戦略的アウトソーシング」を先進的な企業は既に駆使しているのである。
実際、われわれのデータによれば、アウトソーシングの目的を「コスト削減」だけに絞っている企業が21%にすぎない一方、それを戦略価値の中~高程度に位置づける企業は、65%にのぼっている。
アウトソーシング以前
要するに、他に比して「差別化できる部分」こそは自分たちでやり、そうでないところは、もっとうまくできるところが外部にあるのならそこでやる。差別化できる部分に物的・人的資源を重点投入できるよう、いらないところは自前主義を捨て、アウトソースを活用する。こうした「メリハリ」のある組織を構築する必要があることを、われわれは口を酸っぱくして言っているわけである。
差別化できる部分(=コア業務)とそうでないところ(=ノンコア業務)を見極めるにはまず「戦略(連載第1回)」が必要であり、それを実行へ移すための「ガバナンス(同第2回)」であり「アウトソーシング」なのだ。アウトソーシングそれ自体が目的となっては本末転倒ということは、充分にお分かりいただけるだろう。
改めて言うが、アウトソーシングを活用するうえで最も重要なことは、自社(自校)の業務プロセスや戦略ドメインを慎重に検討し、どのような業務を外部に出すのかを決めることである。
図では、アウトソーシングが、包括的な施策の、いちプロジェクトであることを示した。「③外部資源の活用範囲の最大化」にアウトソーシングは含まれるわけだが、それ以前にまず「①業務の進め方の改善・最適化」が必要であり、次に「②最適業務の遂行に適した組織/職務の集約・再定義」を経なければならない。また、業務プロセスでは「⑥業務・規定・制度の円滑運用のための仕組みの埋め込み」、人事制度では「④最終的に必要な正規職員の能力・モティベーションの向上」「⑤余剰工数の新用途創出と、過剰支払い人件費の縮減」が①~③に相関する。
金銭的メリットが発生するタイミングは、①と⑤にマークしており、③には付していない。金銭的なメリットは、アウトソーシング自体の本来的な意義ではなく、包括的な施策の最終的な結果として期待すべきである。
図には、前頁の図における各プロジェクトの具体例を挙げておく。ただしこれはあくまでもサンプルであり試算値であることを考慮いただきたい。
「変革」のメッセージ
手前味噌になるが、われわれのアウトソーシング事例を紹介しよう。
英国の一流通信企業・ブリティッシュ・テレコム(BT)と、800年の歴史を持つコペンハーゲン市の市役所は共通の課題を抱えていた。両者には共に、数百名のスタッフが在籍し、人事コストが高騰していたのである。
BTは通信サービスを2000万人以上の住人や法人顧客に提供すること、コペンハーゲン市役所は五〇万人の市民に多種多様なサービスを提供することが、それぞれ必須の基幹業務である。これらの管理コストを向上させることが双方の組織にとっての戦略上の緊急課題であり、その障壁となる人事業務の大半を一括してわれわれにアウトソースすることでコスト削減目標を達成し、株主と納税者に長期的な価値を提供できるとの結論に達したのだ。
現在、コペンハーゲンは、世界最大の人事アウトソーシング・プロジェクトの本拠地となっている。その一方でBTはわれわれとの合弁事業から完全なアウトソーシング契約に移行している。両者は欧州における人事アウトソーシングの先駆者だが、2003年以降、テレコム・イタリアとマドリッド金融公庫もまた、われわれと人事アウトソーシング契約を結んでいる。
如何だろうか。差別化できる部分において優れていること。そして他と違わない部分でムダのないパフォーマンスを発揮することによって、企業も大学も成長する。
今回紹介したアウトソーシングの考え方は、明らかに従来のものとは違っている。それはひとえに、ある部分をアウトソースするというよりも、「サービスを購入している」ということである。保守的で変化を好まないとされてきた教育界において、戦略的に自ら進んでそうしたサービスを購入しようとする姿勢は、それ自身「真剣に変革を考えている」という強烈なメッセージとなることだろう。
榎原 洋 Ebara Hiroshi
慶應義塾大学経済学部卒業後、アクセンチュア入社。大学・学校法人の他、研究機関、病院、公共交通・運輸業などのコンサルティングに携わる。大学・学校法人においては、募集戦略、新学部学科のフィジビリティスタディ、新規事業戦略、組織再編、人事制度改革、教育プログラム改訂、情報化計画、業務効率化など、多種プロジェクトに従事。
記事の内容は第11号(2005年1月1日発行)を抜粋したものです。
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