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拝啓大学殿~龍谷大学編~

往信

●学習指導要領改訂に伴う入学試験についての対応を、ホームページ等で積極的に公表されており、高等学校としては心強い限りです。さて、新課程対応の入試では、判断基準など従来と違うところはあるのでしょうか? ひと言でいえば試験問題は易しくなるのでしょうか?

●ひと昔前であれば精魂込めて願書に記入し、手を合わせながら投函するというようなことが、生徒たちにとってはある種儀式化しており、それはそれでいいものでした。近年はインターネット出願が普及しており、貴大学も実施されていますが、これまでに目立ったトラブルはなかったのでしょうか。またインターネット出願の比率は増えているのでしょうか?

●四年制大学の競争が激しくなる一方、専門学校への進学者も増えています。短期大学の存在意義をどのように考えておられますか? また、福祉専攻の四年制学部化は考えておられるのでしょうか?

●キャリア開発部を組織されていますが、たとえば高等学校へ出向いていただき、職業観開発講座のようなものを設けていただくことはできるのでしょうか?
●公募推薦入試ではどのような人材を求めておられるのでしょうか?

●龍谷大学の特色として「人間・科学・宗教」をキーワードとされていますが、近年の若者の倫理観、モラルの希薄さなどに対して、どのような教育に取り組まれていますか?

(滋賀県、京都府、大阪府、香川県の高等学校アンケートから作成)


龍谷大学 入試部長・法学部教授 窪田通雄
入試と教学両面の改革で、学力問題に対応します

「ゆとり教育」を標榜した新学習指導要領のもとで育った世代が、2006年に大学を受験することになるわけですが、本学の入試をどう改革していくかについて、学内では議論を継続しています。現在、試験問題の難易度という意味においては、基本的に従来通りのレベルを維持してゆく方針となっています。

というのも、各高校の教育の取組み方がさまざまで、受験生の学力レベルが多様化しているため、ターゲットを想定した入試問題の難易度設定は、非常に困難であると考えているからです。

例えば、中学校で三割削減された学習内容を、補修授業で取り戻せるように取り組んでいる高校もあれば、現実的にそこまでの対応が難しい高校もあるでしょう。

また、学習指導要領そのものも、最低ラインが決められた後で訂正された経緯があるうえ、学校によって使用している教科書もまちまちで、受験生たちが学習してきた内容に格差が生じています。この状況で、試験の難易度を変更すると、混乱を招く恐れがあると考えられます。

さらに、大学としては、新学習指導要領の問題だけでなく、広い意味での学力低下問題にも取り組む必要があります。学力の低下とは、言い換えれば、受験に必要な学力と、入学後、大学の授業を理解するために必要な学力が乖離しつつある、という問題でもあります。

大学教育においては、その差を埋めるための「リメディアル教育」への取組みが、重要性を増しているのです。もちろん入試問題の内容をさらに吟味することも大切ですが、もっと重要なのは、多様な学生を受け入れ、すべての学生に高い付加価値を与えて送り出すための、「教学改革」を推進することであると考えます。

多様な学生に対応するための、本学独自の教育システムの一例としては、「学部共通コース」が挙げられます。

法学部、経営学部、経済学部において、通常の学部内の専攻コース以外に、異文化共生をテーマとする国際関係コースと英語コミュニケーションコース、人間環境共生をテーマとするスポーツサイエンスコースと環境サイエンスコース、という四つの共通コースを用意しています。つまり、さまざまな学生が伸び伸びと学べるように、幅広い選択肢を用意しているというわけです。

入試と教学両面の改革で、学力問題に対応します

公募推薦入試においては、文系の学部であれば、英語と国語の試験(いずれも100点満点)、および高校の学習成績の平均評定値を10倍した値(50点満点)を合計した点数で合否を決めています。

つまり、高校の三年間、日頃からどれだけ真面目に勉強していたか、という要素を大きく加味していることになります。

近年、高等学校における評定値は、相対評価から絶対評価に変化しつつあり、平均評定値を評価すること自体の難しさもあります。しかし、いずれにせよ、公募推薦入試に関しては、受験科目だけでなく、クラブ等も含めて、高校の授業でしっかりと学んできた生徒たちに受験していただきたいと考えています。

インターネット出願の利用に関しては、現時点で、全志願者数のうち1.4%程度となっており、比率としては高くありませんが、今後は当然増加していくものと予想されます。システム的にはきちんと整備されているため、これまでにトラブルが発生したことはありません。

将来インターネットによる出願数が増加しても、技術的な問題や手続きの不備が発生しないように、しっかりと取り組んでいくつもりです。

社会福祉に特化し、短期大学部のメリットを追求します

短期大学部を4年制に移行するかどうかについては、これまでさまざまな角度から議論を重ねてきましたが、現在は、2年制の特色を活かす方向でカリキュラム改革を進めています。

以前は2教科ありましたが、そのうち仏教学科を廃止し、ニーズの多い社会福祉科のみにしましたので、そのぶん特化した態勢で、充実したカリキュラムを構築しています。そのため、確かな実力を備えた人材を輩出しており、各方面から高く評価されています。

短期大学部の特徴としては、まず、多様な資格・免許を取得できる点が挙げられます。具体的には、社会福祉士国家試験受験基礎資格、保育士、初級スポーツ指導員、レクリエーション・インストラクター、中学校教諭二種免許状(社会)、社会福祉主事(任用資格)などが取得可能です。さらに、専攻科に進学して所定の単位を取れば、国家試験免除で介護福祉士の資格を取得できます。

もちろん、授業の内容そのものも非常に充実しています。例えば、ボランティアを活用した実習授業は、文部科学省による2003年度「特色ある大学教育支援プログラム」に採択され、優れた教育効果や実績が認められました。この他、本学および他の4年制大学への編入学も可能であり、短期大学部の学生は、就職、編入、専攻科への進学など、さまざまな進路を選択することが可能となっています。

高齢社会を迎え、医療や福祉に従事する人材が求められている状況下、本学の短期大学部は、大きな社会的使命を担っていると考えています。2年という短期間で、即戦力となれる人材を育成できる意味でも、むしろ積極的に短期大学の特色を打ち出していきたいと思います。

職業観だけでなく、人間教育に力を注いでいます

本学のキャリア開発部は、従来の就職部が発展してできた組織です。学生が、将来自分はどのような仕事を通じて社会に貢献するのかという目標を設定して、持てる能力を存分に開発・発揮できるように、その支援体制を整備しました。

高校からの要請に応えて、職業観開発講座等にスタッフを派遣することは可能だと思いますが、その際には講座の目的や位置づけ等をご指示いただいてご相談することになると思います。

職業観に関する教育については、高校同様、大学においても大きな課題となっています。近年は、高等学校でも、企業人を招いて職業に関する講義を開催するなど、さまざまな取組みがなされているようですが、これからは就職面の教育でも、高校と大学の連携態勢をつくっていく必要があるように思います。

その一方で、大学で教鞭を執っている立場としては、就職に直結する課題に取り組むと同時に、人間としての生き方や、夢を持ち、夢に向かって頑張ることの大切さを教えていくことも重要だと思っています。

私自身は、学生や保護者の方々に対して、「大学に入るということは、社会に出るのを四年間猶予されるということです。

ですから、専門的知識や高い一般教養を身につけて、よりいっそう社会に貢献できる人間に育たなくてはいけません。学生諸君はそのために勉強をしているのです」といった話を、機会あるごとにさせていただいています。

人間教育という意味で、本学は西本願寺を母体とする仏教系の大学であり、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人の教えが、建学の精神に反映されています。仏教の精神は他者への思いやりを持つことです。

現在の社会を見れば非常に大切な精神です。その心を持った学生を育てる教育(教科や行事など)活動を重視しています。

異なる宗教や文化との共在は現代的テーマであり、本学は「共生を目指すグローカル大学」をスローガンにして、教育・研究に取り組んでいます。

大学改革提言誌「Nasic Release」第11号
記事の内容は第11号(2005年1月1日発行)を抜粋したものです。
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