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変わる6・3・3教育

6・3・3から6・6へ。あるいは4・4・4なのか12なのか――。
義務教育の弾力化にともなって、12年という枠内での境界線の位置が変わってきた。注目を集める中高一貫教育の是非と展望についてレポートする。
文責:ナジック総合研究所

中高一貫教育とは

1997年6月の中央教育審議会第二次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(以下、2次答申)において、中高一貫教育の選択的導入が提言された。翌98年には「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立、99年4月1日から中高一貫教育校の設置が可能となった。

2004年度には全国で152校が開設しており、2005年度にはさらに33校増えて185校となる見通しである。
中高一貫教育とは、中学校の課程を前期中等教育、高等学校の課程を後期中等教育と位置づけ、6年間の一貫した教育課程を構築して重複や無駄を省き、ゆとりを生み出すことで質的向上を図ろうとする教育システムであり、それを行っているのが中高一貫教育校である。

この中高一貫教育校には大きく三つの形態がある。一つの学校で中高一貫教育を行う中等教育学校。高等学校入学者選抜を行わずに同一の設置者による中学校と高等学校を接続する併設型の中学校・高等学校。そして既存の市町村立中学校と都道府県立高等学校が、教育課程の編成や教員、生徒間交流等で緊密に連携を図ることで中高一貫教育を実施する連携型の中学校・高等学校である。

また、中高一貫教育校では、生徒一人ひとりの能力、適性を育むとの趣旨から、選択教科をより幅広く導入できるなどの教育課程の基準の特例が設けられ、さらに特別な受験エリート校化したり、受験競争の低年齢化を招くことがないよう、入学者選抜にあたっては学力検査を行わない(中等教育学校、併設型)こととされている。

学科の類型という観点で見れば、ゆっくりと自分のペースで学ぶための普通科タイプ、多様な教科・科目を設定し、その中から生徒が主体的に選択できる総合学科タイプ、明確な生徒の目的意識に応じて興味、関心を深めやすい専門学科タイプ(職業科、芸術科、外国語科等)などが設けられ、学校単位としても、地域に関する学習を重視する学校、国際化に対応する教育を重視する学校、情報化に対応する教育を重視する学校等、特色ある学校づくりが図られている。

中高一貫教育の利点と欠点

ところで、中高一貫教育にはいったいどのような利点があるのだろうか。
二次答申では、中高一貫教育の利点として、
①高等受験に妨げられずに「ゆとり」のある学校生活が送れる
②計画的・継続的な一貫した教育ができる
③生徒の個性や才能を発見、育成しやすい
④異年齢集団の中で社会性、人間性を育めること
などが挙げられている。

また、中高一貫教育推進会議の報告では、⑤生徒の希望に応じた系統的、計画的な学習によって、就職や上級学校への進学などが円滑に行える、⑥中学校段階では特色ある教育課程の編成・実施ができる、⑦高等学校段階では、総合学科や単位制の活用等により特色ある多様な教育活動が展開できる、⑧中学校と高等学校の教員の交流により学校の活性化が期待できる、⑨多様な教育活動、学校運営等の中で地域社会との連携が密になることなどが挙げられ、さらに一般の中学校、高等学校に刺激を与え、学校教育全体の活性化も期待できるとの指摘がなされている。

一方、何事にも利点があれば欠点もある。中高一貫教育校の問題、欠点とは何か。
二次答申では留意すべき点として、
①受験競争の低年齢化
②受験教育への偏向
③幅広い異年齢集団の学校運営の難しさ
④生徒集団が長期間同一メンバーで固定されることによる問題や、途中での転学のしづらさ
などが挙げられている。

この他にも、具体的に自治体において設置が議論される中で、いくつかの問題が指摘されている。例えば、⑤中高一貫教育校を開設することでさらに学校数が減り、むしろ選択の幅が狭まるのではないかということ、⑥受験がないために中だるみが起こりやすく、「ゆとり」が「ゆるみ」になりかねないこと、⑦小学校の卒業段階での進路選択がきわめて困難であることなどがある。

中高一貫教育とわが国の教育

99年9月21日に公表された文部科学省の「教育改革プログラム」には、「当面は、高等学校の通学範囲(全国で500程度)に少なくとも1校整備されることを目標に整備を促進する」と明記されている。
今後、さらに中高一貫教育校が増えることは明らかである。とすれば、考えるべきことは中高一貫教育の選択的導入をいかにわが国の教育に活かすかということであろう。このような観点から、注意すべきことを何点か取りあげたい。

「ゆとり」が生まれるとの前提のもと、中高一貫教育校には実に多くのことが要望されている。しかし、あれもこれもと要望が多くなるほどに、教育現場は混乱し、教育力が低下することは、昨今の学校教育の現場を見れば明らかである。
特に中高一貫教育では、その眼目である「ゆとり」を失わないよう、為すべきことを十分に吟味、取捨選択することが大切である。

また、中高一貫教育校の設置は、選択の幅を広げるものであって、決して従来の中学校、高等学校を否定するものではない。したがって、中高一貫教育校のみを優遇するような措置はその趣旨に反する。
たとえば、中高一貫教育校に強く求められている中学校と高等学校の教員の交流や協力関係の充実、あるいは教科の重複、無駄をはぶくという点などは、一般の小学校、中学校、高等学校においても推し進められるべきである。そうしたことが過不足なく適切に行われてこそ、真に生徒それぞれの自由な選択が可能となる。

中高一貫教育校を志望する生徒、保護者の動機は、①受験に追われずゆったりと過ごせること、②公立学校に対するいじめや学級崩壊、知育への不安、③有名私立進学校の代わりなど、実に多様である。
確かに、中高一貫教育校ではゆったりと過ごせるかもしれない。しかし、必ずしもそれが生徒のプラスになるとは限らない。有名私立大学のある教授は、エスカレーター式で入学してきた学生は、概して大らかではあっても勉学に対する意欲に欠け、自らの進路についても主体的に考え、行動する力が弱いと述べている。

また、中高一貫教育校では、受験教育に特化しないようにとされているため、受験対策の教育を期待する保護者の要望には十分に応えることができない。生徒、保護者は、こうした実情等をよく理解し、十分に納得したうえで、自己責任のもとで一般の学校か中高一貫教育校かを選択すべきである。

今後、中高一貫教育校はさらに増える。あわせて、中高にとどまらず小中高、さらには大学まで含むものなど、さまざまな教育システムの学校が生まれてくることが予想される。
たとえば品川区では、小中一貫教育を08年度から実施するとしている。八四年に設置された臨時教育審議会の議論において指摘されたとおり、実際に中高一貫教育への取組みは、義務教育のあり方や六・三・三制の学校体系の転換を迫りつつある。

さらには、トヨタ自動車・中部電力・JR東海の三社が、株式会社法人による中高一貫教育校を設置することになっている。これが成功すれば、新たな法人格の中高一貫教育校等が増えることにもなる。

中高一貫教育の導入は、わが国の教育にとって一つのターニングポイントとなるに違いない。そしてその成否は、わが国の教育の未来を大きく左右すると考えられる。教師や教育関係者に丸投げするのではなく、今こそ保護者のみならず国民一人ひとりがもっと教育に対する関心を高め、積極的に協力、支援し、これを好機としてわが国の教育のさらなる発展に力をあわせてゆくことが必要であろう。

大学改革提言誌「Nasic Release」第11号
記事の内容は第11号(2005年1月1日発行)を抜粋したものです。
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