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大学評価、学校環境、就職、受験、そしてメディア
理事長 北澤俊和
閉塞感漂う現在――厳しい状況下で学生は何を考え、何を思っているのか。
昨秋実施した学生意識調査からその一端を紹介し、いくつかの提言を試みる。
「学生意識調査」の目的
大学は「激動」の時代を迎えている。今年は、いくつかの意味でその節目にあたる年といってよいだろう。まず、この4月から国立大学は89の国立大学法人となり、また、私立大学を含む全大学での大学評価制度も同月に施行された。さらには大学全入時代の生き残りに向けて、さまざまな形で「大学改革」が進んでいる。
一方、その環境下にある学生もまた、厳しい状況に晒されており、就職内定率は調査開始以来、最低の数字を記録し、奨学金の受給者も倍増している。
このような状況下で学生は何を考え、何を思っているのか。その実態を把握すべく行われたのがこの「学生意識調査」である。

テーマ・対象・方法など
テーマ……「大学評価」「学校環境」「就職」「受験」「メディア」
対 象……東北、関東、中部、関西、中国の都市圏に在学する学生(専門学校、短期大学、大学、大学院に在学)。学年構成は右図を参照
実施時期……2003年10月24日~11月4日
方 法……インターネットのメールにてアンケート協力を依頼。アンケートウェブへのアクセスで調査票を回収するネットリサーチ
サンプル数……467名
調査対象者の基本的属性
■年齢
18歳7%/19歳26%/20歳27%/21歳18%/22歳12%/23歳6%/24歳2%/25歳以上1%/未回答1%
■性別
男子51%/女子49%
■出身地
北海道2%/東北7%/関東15%/北陸9%/中部25%/近畿16%/中国12%/四国7%/九州7%
大学評価への期待
「大学評価」において、学生は何を対象として望んでいるのだろうか。

大学評価制度では「全学的な教育研究等の状況」「専門職大学院の教育研究活動の状況」が評価の柱となっている。「大学評価」のテーマ調査において、学生も評価対象の項目に「教育研究の内容」と「教育方法」を挙げる声が圧倒的に多かった(図2)。
とりわけ「今の大学評価は研究に偏っているように思う。もっと教育面も評価に入れるべき」(大学院二年/男子)といった、研究よりも教育を評価対象に望む声が多い。
教育者としての教員への目も厳しい。「教授の教え方に疑問を抱くことがあります。研究熱心ではあるのかもしれませんが、教えるという点を考えると、不満もあります。
偏差値が高く知名度のある大学に入っても授業がつまらないのでは興味も半減します。教授の授業内容などをもっと評価の対象にしてほしい」(大学二年/女子)などの手厳しい意見が数多くみられた。変革は「教える側」に求められているのである。
大学のステークホルダー
評価とは、ステークホルダー(利害関係者)へのアカウンタビリティーの明示に他ならない。大学のステークホルダーは、学生、中でも受験生が重要な位置を占める。受験生は大学評価に何を求めているのだろうか。
「大学は学生が学び成長する場であるので、学生が何を求め、大学生活を通して何を得ていったのか、といった観点に立った評価をしてもらいたいし、そこが受験生の1番気になるところだと思う」(大学3年/女子)。「大学評価は、受験生にとって、大学選びの基準として信頼できるものでなければ意味がない」(大学4年/女子)。
ステークホルダーへの配慮は、民間企業では欠かせないものである。しかしだからといって、それが、民間企業だけに必要であることを意味するものではない。「サバイバル」といわれて久しい大学も、ステークホルダー議論は、もはや無縁ではないのである。
大学関係者は受験生をはじめ、学生、教職員、地域住民の声を、真摯に受け止めるべきだろう。
ハードの充実
「学校環境」のテーマでは、次のような指摘があった。
「大学は自らが学ぼうとすれば、とことん学べる学び舎だが、いざ学ぼうとしても、図書関係や学術情報が充実していなければ学べない。学生にとって『学べる環境』を用意している大学は、いい評価が得られると思います」(大学3年/女子)
自学自習のための施設・設備や図書などの施設面――いわばハードの充実度は、学生への訴求力が高い。
しかしそれは、「新しい建物」「オシャレなキャンパス」といった皮相的な問題ではない。先の学生の言葉にある通り、学生が学ぼうとするときに、どれだけ役に立つハードを供給できるか。ハード面の可能性の中心は、まさにここなのである。
競争原理の導入と世界基準
自己評価も含め、多方面から検証された評価は、積極的に公開すべきである。公開することにより、大学間の切磋琢磨が行われ、それがわが国の大学全体の底上げにもつながる。「大学間の競争」が鼓吹されて久しいが、そもそも競争市場自体のレベルが低ければ、どうなるだろう?
「国内での位置がどうこうよりも、世界での存在意義を考えるようでないと、日本は今世紀、生き残れないと思う」(大学3年/女子)。経済、金融、産業、そして教育と、すべての競争市場が地球規模へと爆発的に拡大した現代において、「世界基準」の重要性を、学生はすでに知っているのである。
新たな産学協同の形
就職内定率の低迷が続く中、学生はそれぞれが籍を置く学校にどのような就職支援を求めているのか。アンケートでは、「豊富な企業・業界情報」が最もポイントを集め、次に「業界に精通したアドバイザー」が続く。学生が、現在の大学提供の企業情報に大きな不満を持っていることが読みとれる。これは時代のスピードに大学が立ち後れていることを示しているのではないだろうか。
これからの就職支援は、時代の趨勢や経済のグローバル化を充分に意識した情報提供を柱とすべきである。ただ、大学内だけでの情報収集、提供には限界があるだろうから、産業界からの情報提供を求めるなど、新たな産学協同の形が生まれてもよいのではないだろうか。
社会問題化する若年層の雇用
厚生労働省の「若者自立・挑戦プラン」や『若年者キャリア支援研究会報告書』では、若年層の雇用・就業に関して深刻な社会問題を引き起こしかねないと警告を発している。
就業先がないわけではない。中小企業の求人難は依然として続いており、「e-Japan重点計画」を遂行するためには42万人の情報通信人材が不足しているとの指摘もある(情報通信ソフト懇談会の『最終報告書』)。
若年層の意識自体にも大きな問題がある。東京商工会議所の「新卒者等採用動向調査について」では、最近の採用に関する悩みとして「学生の就業意識の低下」「やる気のなさ」「学力の低下」「就職難の割には危機感のない学生が多い」など、学生サイドの質の低下が挙げられている。事態の深刻化をくい止めるためにも、教育界と産業界が、ともにこの問題に取組むことが急務だと考えられる。
低年齢化するキャリアプランニング
図示は割愛するが、「就職支援」で求められる項目において、「豊富な企業・業界情報」「業界に精通したアドバイザー」「就職に役立つ講義の開講」などが、大学低学年次で高いポイントを集めた。
一方、「1・2年次からの計画的なキャリア形成」をしてほしいと考えているのは大学3・4年生に多かった。また、希望職種について尋ねると、「研究職」「クリエイティブ職」「コンピュータ関連」など、入学当初から明確なビジョンを持っている大学生が多く見受けられた。しかし、実際の就業状況をみると、必ずしも入学当初の希望とは一致していない。
つまり、その職業に就くためのより具体的な情報を欲していたにもかかわらず、情報が得られなかったのではないか。その職種に就くためのキャリア形成ができなかったために、希望の職種を諦めざるを得なかったのではないだろうか。
本人の能力や志向性の問題もあるが、具体的な職業に直接的に結びつく就職支援が何よりも望まれる。
ブランド重視の男子資格重視の女子
受験に際する学校選定の基準をいくつかの選択肢を用意して聞いた。
男女とも、最もポイントを集めたのは「学びたい学部、学科、専攻だった」だが、子細にみれば、違いがある。男子は「知名度」や「就職実績がよいこと」を選定理由としているのに比べ、女子では「身につけたい資格、免許が取得可能なこと」も大きな理由として挙げている。
女子の資格志向はよく取り上げられるが、現在、その資格も多様化している。時代の要請に応えるべく、学校は資格取得への取組みを強化すべきだろう。

テレビと新聞の影響力
高校時代によく利用したメディアを聞いたところ、「テレビ」が大きく他を引き離してトップだった(図4)。また、最も信頼するメディアとしては、「テレビ」に倍以上の差をつけて「新聞」が挙げられた(図5)。
興味深いのは、利用したメディア、信頼するメディアの両方で、「インターネット」とともに、「友人との会話」がポイントを集めていることだろう。巷間囁かれている「情報」としての「口コミ」の存在が、ここでも明らかになっているといってよいだろう。

大学評価制度のスタート直前に、本調査のような学生の生の声を採取できたことは意義深いといえる。学生の意見はどれも貴重なものである。大学評価には、これら学生の声を大いに活用すべきだろう。今回の調査は、すべての学生を網羅したものではないが、学生の意識の一端を窺える結果になっているはずである。
財団法人学生サポートセンターでは、今回の結果を『「今、学生は何を思う」学生意識調査報告書2003年度版』として刊行した。学校関係者のみならず、多くの方々の目に触れれば幸いである。
調査委託:ナジック教育ソリューション
本稿についての問い合わせ、詳細は
財団法人 学生サポートセンター
電話: 03-5766-8207
http://www.gakusei-sc.or.jp
記事の内容は第10号(2004年5月15日発行)を抜粋したものです。